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採用基準の決め方|必須項目と設定や見直し時の注意点

採用基準の決め方|必須項目と設定や見直し時の注意点

採用活動は、自社に必要な人材を効率よく採用することがポイントになります。

求める人材を効率的に採用するためには採用基準の設定が重要です。

採用基準に入れるべき項目は採用活動を行う目的や対象となる人材、新卒採用か中途採用かによっても異なります。

この記事では

  • 採用基準を設定すべき理由
  • 採用基準の設定手順
  • 採用基準に入れるべき必須項目
  • 採用基準を基に人材を見極める方法

などについて解説します。

採用基準とは

採用基準とは、自社にとって必要かつ適切な人材を採用するための指標です。

採用基準を適切に設定すれば、面接官の主観を排除し、候補者を公平に評価・選考することができます。

どのような指標にすべきかについては経営者の考え方によって異なりますが、自社の成長と候補者の人生にも関わってくるため、適切かつ慎重に設定する必要があります。

採用基準を設定すべき理由

採用基準を設定すべき理由は下記です。

  • 採用のミスマッチを防ぐ
  • 選考プロセスの最適化につながる

採用のミスマッチを防ぐ

採用基準を適切に設定することにより、自社で活躍できる可能性の高い候補者を取りこぼすリスクが減ります。

また、問題行動を起こしかねない人材の採用を防いだり、内定辞退、早期離職につながるミスマッチを防いだりすることにつながります。

適切に採用基準を設定すれば面接官によって差がでることもなく、採用のミスマッチを防ぐことにつながります。

選考プロセスの最適化につながる

適切な採用基準があれば、無駄な選考が減り、どこに時間をかければ良いか判断できるため、採用活動を効率化できます。

また、候補者を採用した根拠が明確になるため、適切な部署に人材を配置できます。

面接が複数回にわたる場合、それぞれの面接を異なる面接官が担当するケースもあるでしょう。また、途中で担当者が離職したり、異動したりする可能性もあります。

適切な採用基準が設定されていれば、評価を統一でき、選考の属人化を防げます。

また、担当者が複数人になった場合も採用基準を確認することで採用活動を滞りなく進めることができますし、面接官が代わる際も引継ぎが容易になるなど、採用活動を効率化できます。

採用基準が不適切な場合

採用基準が不適切な場合、採用活動の質に差が生まれ、今後の企業経営に影響をおよぼす恐れがあります。

例えば、新しい部門を立ち上げ、その責任者を採用したとしても、採用基準が適切でないことから、専門性やスキルにミスマッチが生じ、新しい部門が機能できなくなります。

厚生労働省が発表した「新規学卒者の離職状況」によると、令和2年3月新規大卒就職者のうち32.3%が入社後3年以内に離職している結果となりました。この結果は平成8年からほとんど変わっていません。

採用面接の場では、候補者が自分をよりよく見せようと立ち振る舞うこともあります。

採用基準が適切に設定されていないと、人事や役員、現場の求める人材に齟齬が生じる恐れがあります。

結果的に入社後、会社や配属先の社員となじめなかったり、業務内容のミスマッチが生じたりしてしまい、早期離職につながる可能性もあります。

参考:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00006.html)」※1

採用基準の設定手順

採用基準の設定手順

適切な採用基準を設定する方法は以下です。

  • 就活・転職市場の動向を把握する
  • 採用の目的を確認する
  • 欲しい人材像を明確化する
  • 評価項目を設定する
  • 評価基準を決める
  • 評価基準の優先順位を設定する

就活・転職市場の動向を把握する

まず、就活・転職市場の動向を把握します。

「応募があったものの求める人材が少ない」「求人を出したものの応募がない」という場合、求人票に記載している条件が採用ターゲット層の価値観と乖離している可能性があります。

例えば、ワークライフバランスを重視する世代を重点的に採りたい場合、「仕事が第一優先」という志向を基準にしてしまうと適切な採用活動が行えません。

採用活動を実施する時期や業種、職種によって有効求人倍率は差があります。それぞれの状況に応じた基準を設定することが重要です。

求める人材の供給状況や他社の人材獲得状況などを踏まえ、現実的で合理性のある採用基準を把握しましょう。

一昔前であれば応募者が殺到していた採用基準であっても、現時点で人手不足なのであれば現状を踏まえた内容で設定する必要があります。

人材関連の民間企業のデータや厚生労働省が公表している一般職業紹介状況なども確認しながら設定すると良いでしょう。

参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計) (https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/114-1.html)」※2

採用の目的を確認する

次に採用の目的を確認します。一般的な採用目的は以下の2つにわけられます。

  • 事業内容や規模拡大
  • 即戦力となる経験者や管理職の獲得

採用活動は事業戦略の一環です。

自社にどのような課題があり、その課題解決のためにどのような人材を採るべきかを確認する必要があります。

採用目的を確認し、明確化することで採用候補者像や採用人数を絞ることができ、採用活動の効率化や入社後の定着率の向上にもつながります。

欲しい人材像を明確化する

求める人材像は人事だけでなく、役員や現場の声をヒアリングして設定します。このとき、自社で求める人物像だけでなく、業務遂行に必要な知識やスキルなどを具体的に聞き出し情報収集を行います。

評価項目を設定する

採用市場の動向や求める人材像が定まったら、書類選考や面接で用いる評価項目を設定します。

欲しい人材像に適した項目をそれぞれの担当者が思いつくまま出し合います。

面接や書類選考にかけられる時間は限られますので、ピックアップした項目から優先順位をつけて絞りこみます。

評価基準を決める

評価項目が決まったら評価尺度を決めます。採用のミスマッチの原因の一つに、評価尺度が曖昧ということが多いです。

一般的には各項目に対して1~5の5段階で評価を行います。項目ごとに評価レベルを明確にできなければ採用担当者の主観が入り、採用のミスマッチにつながります。

これを防ぐ方法の一つにルーブリック評価があります。ルーブリック評価とは、学習の達成度について表を用いて測定する評価法です。

従来はペーパーテストを使って評価していました。しかし、ペーパーテストだけでは評価可能な範囲が狭く、学習者のやる気を引き出すことにつながらないため、ルーブック評価法が注目されています。

ルーブリック評価の特徴は複数の評価項目についてそれぞれのレベルを評価することです。

レベル判定のために具体的な評価基準が示されているため、定量的に評価しやすくなり、一貫性を持った評価が可能になります。

【ルーブリック評価の具体例】

主体性

  1. これまでの自身の取り組みについて語ることができる 
  2. これまでの取り組みに対し、独自の視点や解釈を持っている
  3. これまで培った経験や能力を基に、自社で再現しようという積極的な意欲がある

協調性

  1. 誠実な態度でコミュニケーションをとることができる
  2. 傾聴・共感の姿勢が見てとれ、相手の話に共感できる
  3. 自身や他者の意見を取り入れ、共通の目的に向かって邁進する力がある

自社の理念への共感

  1. 志望動機や入社後のビジョンについて話すことができる
  2. 自身の価値観を踏まえたうえで志望動機と入社後のビジョンを話すことができる
  3. 自社のビジョンに沿った形で、志望動機と入社後のビジョンを具体的に語ることができる

面接官の質問に対し、戻ってきた回答をレベル別に評価し、採用ラインを定めることで採用可否の判断を公平に行いやすくなります。

採用基準に入れるべき必須項目

採用基準に入れるべき必須項目

採用基準に入れるべき項目は企業によって異なりますが、下記の3つは必ず入れておきましょう。

  1. 価値観・人間性
  2. スキル・経験
  3. カルチャーフィット

それぞれ下記で解説します。

価値観・人間性

採用候補者の志向や価値観を見ることは企業風土にマッチするかどうかを判断するうえで非常に重要です。

即戦力となる経験や高いスキルを持った人材であっても、企業風土とマッチしなければ、組織の雰囲気が悪化したり早期離職につながったりする恐れがあります。

スキル・経験

価値観や人間性が企業風土とマッチしていても、自社で有用な経験やスキルがなければ就社後に活躍してもらうことは期待できないと言えます。

面接の際は「具体的にどういうことをどうやって成し遂げたのか」「一番苦労した経験は何か」などの質問を投げかけ、戻ってきた回答で見極めると良いでしょう。

また、成し遂げたものが候補者の個人によるものなのか、チームワークによるものかなども細かく聞くことで、候補者のスキル・経験だけでなく、人間性や仕事の仕方も把握できます。

社風とのマッチング度

中途採用の場合、前職の社風に染まっていたり、従来の手法で業務を遂行しようとしたりするケースも少なくありません。そのため、新しい社風に溶け込めるか、柔軟性があるかといった項目も重要です。

例えば、意思決定の仕方や企業独自のローカルルールなどを理解できるか、適切に対応できるかといった点も考慮して判断していきます。

新卒採用と中途採用の採用基準の違い

ここからは新卒採用と中途採用における採用基準の違いを解説します。

新卒採用

新卒採用は社会経験がない、あるいは期間が短いため、人側や考え方を重視したポテンシャル採用になります。

新卒採用では働きながら経験を積み、スキルを高めて会社に貢献できるかどうかがポイントです。

新卒採用の採用基準としては以下の項目を重視すると良いでしょう。

  • コミュニケーション能力の高さ
  • 協調性や主体性
  • 信頼性や誠実性

新卒採用では入社後に業務を覚え、スキルを身につけることになります。そのため、上司や先輩とスムーズにコミュニケーションを取れるか、自分で考え、自分意思を発言できるかなどを見抜く必要があります。

また、会社は組織ですので協調性が必要ですし、コンプライアンスや法令を遵守するためには信頼性や誠実さも必要です。

特に新卒採用では、わからないことをわからないと認め、失敗を失敗と認め、上司や先輩に指示を仰ぎ、アドバイスを引き出す力が求められます。

面接の際は学生時代や日常生活で取り組んだことに加え、失敗した経験について聞いてみると良いでしょう。

また、バックグラウンドチェックなどでウェブやSNS上での言動をチェックすれば、誠実さや素直さの判断材料になるでしょう。

中途採用

中途採用は社会経験があり、学校を卒業してから3年以上が経過しています。中途採用ではスキル採用が主となるため、以下の項目を重視すると良いでしょう。

  • どの業界でどの程度貢献したか
  • 即戦力となるスキル
  • 求める人材像との適合性

中途採用の場合、募集ポジションに必須となるスキルや経験があるかについて必ず確認しましょう。

資格やスキルの有無だけでなく、年数応じたスキルを身につけているか、自社で活躍できるレベルかどうかまで見極める必要があります。

面接では前職での役割やミッション、目標の達成度や主体的に取り組んだことなど、具体的に掘り下げていくと良いでしょう。

ただし、スキルや資格を保有していても、候補者の人格や思考の癖によっては採用のミスマッチが生じる恐れがあります。

面接では会社選びで重視することや、自社に興味を持った理由、前職や現職での不満などを聞き出すと良いでしょう。

バックグラウンドチェックやリファレンスチェックで前職での勤務態度や評判などをチェックするのも判断材料の一つとして有用です。

採用基準を設定する際の注意点

採用基準を設定する際の注意点

採用基準を設定する際は以下の点に注意しましょう。

  • 人事だけでなく、現場や上層部からもヒアリングを行う
  • 採用基準は明確な表現で言語化・定義づけを行う
  • 就職差別をしない

人事だけでなく、現場や上層部からもヒアリングを行う

採用基準は採用担当者だけでなく、現場や上層部の意見も踏まえて作成することが重要です。採用担当者が決めた採用基準が現場の求めるレベルに合っていないケースが少なくありません。

どのようなスキルや能力が必要かについては現場のほうが適切に判断できるはずです。

また、上層部が思い描く企業のビジョンや経営方針に合わせることも重要です。採用基準が会社の人材育成計画や将来のビジョンと適合しているかも踏まえて作成しましょう。

採用基準は明確な表現で言語化・定義づけを行う

採用基準を作成する際は明確な表現で言語化し、抽象的な表現にならないよう注意しましょう。前述のルーブリック評価を参考にすると良いでしょう。

就職差別をしない

就職差別とは、採用候補者の資質や能力・適性と無関係の事柄や、本人の責任でない事項などを理由に起業側が採用・不採用を決定することを言います。

公正な採用選考の基本として、厚生労働省は「応募者の基本的人権を尊重すること」「応募者の適性・能力に基づいて行うこと」の2点を掲げています。

また、採用選考時に配慮すべき事項として、下記14事項を就職差別につながる恐れがあるものとしています。

  • (a)本人に責任のない事項の把握
    • 本籍・出生地に関すること(注1)
    • 住宅状況に関すること
    • 家族に関すること
    • 生活環境・家庭環境などに関すること
  • (b)本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)の把握
    • 宗教に関すること
    • 人生観・生活信条などに関すること
    • 思想に関すること
    • 購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
    • 支持政党に関することの把握
    • 尊敬する人物に関すること
    • 労働組合(加入状況や活動歴など)、学生運動などの社会運動に関すること
  • (c)採用選考の方法
    • 身元調査など(注2)の実施
    • 合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施(注3)

※これらに限られるわけではありません。

  • (注1)「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します。
  • (注2)「現住所の略図等」は、生活環境などを把握したり、身元調査につながる可能性があります。
  • (注3)採用選考時において合理的・客観的に必要性が認められない「健康診断書」を提出させることを意味します。

引用元:厚生労働省「採用選考時に配慮すべき事項(https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/consider.html)」※3

上記に該当する内容の採用基準を作成しないよう十分に注意しましょう。

採用基準を見直すポイント

転職市場の動向や現場の課題に合わせて、採用基準を作り直すことも重要です。

時代が変われば自社の状況も変わりますし、現場の動向も変わります。また、現場で活躍しうる人材の特性も時代や組織によって変わります。

現場でより活躍できる人材の特性を把握し、採用したい人物像を見直し、適切な採用基準に設定し直すことが重要です。

採用基準を基に人材を見極める方法

採用基準を基に人材を見極める方法

採用基準は下記の場面で活用できます。

  • 書類選考
  • 適性検査
  • 面接

書類選考

履歴書や職務経歴書は採用候補者の学歴・職歴、属性などを知ることができる書類です。

書類選考の際は以下の項目を採用基準に設定すると良いでしょう。

  • 資格や職歴が応募条件を満たしているか
  • 基本的な文章スキルや経験
  • 読み手への配慮
  • 誠実さ

適性検査

採用活動の一環として適性検査を行う企業も多いでしょう。適性検査では主に言語分野と非言語分野両方の能力を数値化し、採用の判断材料として用いることができます。

適性検査の際は以下の項目を採用基準に設定すると良いでしょう。

  • 配属予定の業務に対する適正
  • 自社の重視する項目とのマッチング

面接

面接では、書類では判断できない項目を会話のなかから判断することができます。なお、面接では選考フローや募集職種・役職によって評価項目を変えることも重要です。

求める人物像に備わっている能力やスキル、性格などの要素を踏まえて評価項目を決めていきます。

  • 応募者情報
  • 身だしなみ(第一印象)
  • ビジネスマナー(第一印象)
  • 視線・表情・話し方や声の大きさ
  • 志望動機
  • 自己PR
  • 成功体験
  • 失敗体験
  • 主体性
  • 行動力
  • 課題発見力
  • コミュニケーション能力
  • 向上心
  • ストレス耐性

まとめ

適切な採用基準を設定すれば、自社に適した人材の採用活動を効率よく進めることができます。

採用基準を設定する際は採用市場の動向を把握し、現場や上層部の意見を取り入れながら、自社が求める人物像を明確にする必要があります。

この記事で解説した内容を参考に、適切な採用基準を設定し、採用活動に生かしてください。また、すでに採用基準を運用されており、採用のミスマッチが多いとお悩みの方は採用基準を見直すと良いでしょう。

採用基準を基により自社に適した人材を採用するためには、候補者の客観的な情報を加えるバックグラウンドチェック・リファレンスチェックを判断材料に入れることも検討すると良いでしょう。

※1 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します

※2 厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)

※3 厚生労働省「採用選考時に配慮すべき事項