担当者向け基礎知識

採用力とは?優秀な人材を惹きつけ、組織を強くする具体的な高め方

2026.01.26

採用力とは?優秀な人材を惹きつけ、組織を強くする具体的な高め方

労働人口の減少が加速するなか、企業の持続的な成長の戦略のひとつとなっているのが採用力です。

ただ単に人を集めるだけではなく、自社に適した人材を計画的に採用できるかどうかが企業業績を左右する時代です。

しかし、「どうすれば採用力を向上できるのか」「採用力向上の具体的な施策がわからない」というケースも少なくありません。

そこで本記事では、採用力の定義から、採用力を高めるためのポイント、採用力を効果的に高めるステップまでを徹底解説します。

採用力とは

実は「採用力」という言葉には明確な定義があるわけではありません。

もっとも、採用力検定を主催する一般社団法人日本採用力検定協会によれば、採用力とは「組織および社会に有益な採用活動を設計・実行する力」を指すと定義しています。

一般的には、「自社が求める人材を、必要な時期に、計画通りに獲得できる総合力」を指すことが多いです。

採用力を高めるためには、ただ単に「応募数を集める力」ではなく、求職者に自社の魅力を的確に伝える力や自社に適した人材を見極める力、候補者を惹きつけて定着させる力など、様々な技術やノウハウが必要です。

参考≫≫
一般社団法人「日本採用力検定協会採用力検定について(https://saiyouryoku.jp/about/)」※1

採用力が注目される背景

近年、多くの企業が採用力の強化を優先課題に掲げる理由には以下のようなものがあります。

  • 人手不足の深刻化
  • 採用活動が経営戦略のひとつとして考えられるようになった
  • 採用活動が複雑化している

それぞれについて下記で解説します。

人手不足の深刻化

少子高齢化に伴い、日本の生産年齢人口(15〜64歳)は減少の一途を辿っており、多くの業界で売り手市場が常態化しています。

このような状況において、従来の「求人媒体に掲載して応募を待つ」という受け身の採用姿勢では、優秀な人材との接点を持つことすら困難になってしまいます。

帝国データバンクが2025年10月20日~10月31日、全国2万5,111社を対象に、「雇用過不足」に関するアンケート調査を実施しました。

これによると、2025年10月時点で正社員の人手不足を感じている企業は51.6%と、4年連続で半数を超える結果となり、慢性的な人手不足であることが伺えます。

参考≫≫
帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2025年10月)
(https://www.tdb.co.jp/report/economic/20251117-laborshortage202510/)」
※2

採用が経営戦略のひとつとして考えられるようになった

組織が成長を続け、競争力を上げるためには、優秀な人材の確保が必要です。

また、DXの推進や新規事業の立ち上げなどの経営戦略を遂行するためには特定のスキルを持つ人材が不可欠です。

実際に必要な人材が離職したり、採用できなかったりすることにより、事業継続が困難になるケースも増えています。

前述の「人手不足に対する企業の動向調査」によると、人手不足による倒産件数が2025年度上半期(4-9月)に214件発生しており、上半期としては3年連続で過去最多を更新しています。

採用の成否が事業の成否や存続に直結する時代になりつつあるのです。

採用活動が複雑化している

従来の採用では、求人媒体に掲載して応募を待つというスタイルが主流でした。

近年は採用活動が複雑化し、求人媒体への掲載だけでなく以下のように様々な手法があります。

  • ダイレクトリクルーティング
  • リファラル採用
  • SNS活用(採用広報)など

採用手法が多様化したことで、候補者との接点が増えたため、戦略的なアプローチが求められるようになりました。

採用力を高めるメリット

採用力を高めるメリット

採用力を高めると以下のようなメリットが得られます。

  • 求める人材を採用できる
  • 離職率が低下する
  • 安定した成長基盤を築くことができる

それぞれについて下記で解説します。

求める人材を採用できる

採用力を高めることで組織が求める人材をピンポイントで獲得できる可能性が高くなります。

スキルだけでなく、企業の文化や価値観までマッチした人材を適切に採用できれば、その人材は組織に大きく貢献できる可能性が高くなり、企業成長につながります。

また、自社に適した人材が定着すれば、組織全体の士気も上がります。

既存従業員の主体性やモチベーションが上がれば、採用コストや育成コストを削減できるため、企業の生産性も向上します。

離職率が低下する

採用力を高めるためには、職場環境を整え、自社の実態を正しく伝えることが不可欠です。

これにより、自社の理念に共感した人材が集まり、相互理解を深めたうえで入社するため、採用のミスマッチを防ぐことができます。

早期離職の主な理由に採用のミスマッチがありますが、採用力を高めることで採用のミスマッチを防ぎやすくなるため、離職率を減らす効果が期待できます。

また、働きやすい環境を整備することで、既存従業員のエンゲージメント向上にもつながるため、離職率の低下につながります。

安定した成長基盤を築くことができる

自社が求める人材を適切に採用できれば、人材が定着し、長期的に活躍することが期待できます。

これにより、組織全体の生産性が向上し、安定した成長基盤を築くことができます。

成長基盤が安定することで、組織全体のモチベーションが向上し、一枚岩となって業務に取り組むことができるため、組織の持続的な成長につながります。

採用力が高い企業の特徴

採用力が高い企業の特徴

採用力が高いに企業には、共通する特徴があります。

求める人物像が明確

採用力が高い企業は求める人物像が明確です。

「〇〇を解決するために、〇〇のスキルと経験、〇〇の価値観を持った人」など、採用したい人材の要件や人物像が具体的に言語化され、定義されています。

採用目的と目標が明確

採用力が高い企業は採用目的や採用活動の目標が明確です。

既存事業の人員補充なのか、新規事業を担う即戦力なのか、新卒なのか育成前提なのかが明確です。

また、「いつまでに〇〇の人材を何人採る」という数値目標も明確です。

これらの採用目的や目標について、人事採用担当だけでなく、受け入れ先である現場の管理職や従業員、経営層まで共有されているというのも特徴です。

採用手法が適切

近年は求人媒体への掲載だけでなく、ダイレクトリクルーティングやリファラル採用、SNSなど、採用手法が多様化しています。

採用力が高い企業は自社の求める人材がどういった媒体を利用しているのかを把握し、最適なチャネルを使い分けています。

反対に、採用手法が適切でない場合、どれだけ自社の魅力をアピールしても、ターゲット層に届かず、応募が集まらないという事態が起きてしまいます。

採用担当全員が共通認識を持ち、判断基準が揃っている

採用担当が複数いる場合、担当者によって候補者の評価がわかれてしまう恐れがあります。

採用力の高い企業は判断基準が揃っており、採用担当者全員が共通認識を持っています。

一貫した基準で合否判断が行われるため、担当者が変わっても評価がバラつくことがありません。

採用ターゲットの心に響く情報や自社の魅力を的確に発信している

採用力が高い企業は、自社の魅力をターゲット層の心に刺さる形で効率的に発信しています。

具体的には、働く環境や挑戦できる課題、社風、従業員の働く様子や生の声などを、自社のウェブサイトやSNSで効果的に発信しています。

これを見た求職者は自社で働くイメージが湧きやすくなります。

ターゲット層によっては、SNSやウェブサイトだけでなくオ、採用イベントやセミナーなどのオフラインのイベントに参加することも有効です。

適切なチャネルで自社の魅力を効果的に伝えることで他社との差別化を図り、「ここで働きたい」と思わせることができているのです。

従業員のエンゲージメントが高く、離職率が低い

採用力が高い企業は従業員のエンゲージメントが高く、離職率が低い特徴があります。

どれだけ優秀な人材を採用しても、定着しなければ採用力が高いとはいえません。

「採用して終わり」ではなく、採用した人材が長く活躍できるような環境作りを行いましょう。

具体的には内定者フォローや1on1、スキルアップ支援などのフォローアップ体制を整えると良いでしょう。

「社員が自社を他人に薦めたいと思っているか」は強力な採用武器になります。

例えば、リファラル採用が活発な企業にもこの特徴が当てはまります。

従業員のエンゲージメントが高い企業はリファラル採用やアルムナイ採用の際も効果を発揮しやすくなります。

採用力を高めるポイント

採用力を高めるポイント

採用力を高めるにはポイントがあります。

以下で詳しく解説します。

企業力・ブランド力の向上

採用力を高めるためには、候補者から「この会社で働きたい」と思われる必要があります。

そのため、候補者の転職先として魅力的に映るような企業力やブランド力の向上が重要です。

具体的な施策の例には以下のようなものがあります。

  • 企業理念やビジョン、成長戦略、社風などの自社の魅力を社内外に対して明確に発信する
  • 競争力を強化し、事業の成長性を高める
  • CSR活動やSDGsに取り組み、社会的に評価される企業像を構築する
  • 従業員の1日の流れや、失敗談、キャリアパスなど、ターゲットが知りたい情報を適切に伝える

もっとも、企業力やブランド力は短期間で構築できるものではありません。

長期戦で取り組み、継続的に浸透させる必要があります。

労働条件の見直し・福利厚生の充実

働き方の多様化が進んだことで、労働環境を重視する求職者も増えました。

そのため、自社の労働条件の見直しや福利厚生の充実を行い、働きやすい環境作りを構築することも重要になります。

労働条件の見直しや福利厚生の充実具体的には以下のような施策があります。

  • 競合他社と比較し、給与水準を見直す
  • 柔軟な働き方(リモートワーク、フレックスタイム制度など)の導入
  • 資格取得や自己研鑽などのキャリアアップのサポート
  • 家賃補助 など

採用基準や求める人物像を明確に定める

採用力を強化するためには、採用基準や求める人物像を明確に定義し、組織内で共有することが不可欠です

まずは求める人物像を定義し、必要なスキルや特性、経験、価値観などを言語化し、明確に定義します。

定義ができたら、「必須要件(Must)」と「歓迎要件(Want)」を決め、優先順位を決めていきます。

人物像については、自社で活躍している従業員の特性をヒアリングして言語化することで、より実態に基づいた像を描くことができます。

なお、採用基準や求める人物像については、採用担当だけでなく、必ず現場のマネージャーと目線合わせを行いましょう。

こうすることで、選考基準のブレを減らすことができ、ミスマッチ軽減につながります。

「採用基準や人物像についてすでに定義しているが応募者数が少ない」「選考通過者が少ない」といった場合は採用市場とのズレがあるかもしれません。

今一度見直しを行いましょう。

採用プロセスを最適化する

応募から内定までの採用プロセスを見直し、効率化を図ることも採用力強化に不可欠です。

DXやITツールを駆使し、応募管理や日程調整、進捗確認などの効率化を図りましょう。

また、採用プロセスの見直しの際は採用手法についても見直しを行いましょう。

採用手法が求める人物像とマッチしていなければ、期待した効果が得られず、採用効率が悪くなります。

人物像や採用数、期限などを踏まえ、適切な手法を選択しましょう。

採用担当者の選定・育成

採用担当者の選定・育成

面接官には自社の魅力を語るスキルや、候補者の本音を引き出すヒアリングスキル、客観的に候補者を判断するスキルが不可欠です。

面接官を選定する際はこれらのスキルの高い人物を選びましょう。

また、ミスマッチを防ぐためには、多角的な視点で候補者を評価することも大切です。

そのため、面接官を育成し、複数人で対応できるような体制を整えることも重要です。

面接官を求職者に寄り添う役割と惹きつける役割にわけて行う方法もあります。

なお、面接官が候補者を評価する際、同時に候補者からも面接官が評価されているということを認識しておきましょう。

面接官の言動によっては「ここには入りたくない」と思われたり、SNSなどに投稿されたりして、ブランド力や会社の信用が低下する恐れもあります。

面接官を育成する際は、前述のスキルだけでなく、身なりやマナー、姿勢や態度なども重視して行いましょう。

また、採用活動は面接だけではありません。スカウトなどで応募を募る場合も、求職者に合わせたアプローチの仕方が必要です。

求職者の経歴や特性に合わせた文面にするなど、競合他社との差別化を図ることが大切です。

入社後の定着支援

候補者が入社したら終わりではありません。

採用した人材が入社後に長く活躍してこそ採用力強化といえます。

採用した人材が定着し、長く活躍してもらうための施策には以下のようなものがあります。

  • オンボーディング研修の実施
  • メンター制度の導入
  • 1on1などの定期的な面談
  • キャリアアップ開発支援
  • コミュニケーションの促進 など

採用力を向上させる効果的なステップ

採用力を向上させる効果的なステップ

ここからは、採用力を効果的に向上させるための実践編です。

具体的なステップは以下のとおりです。

  • 自社の課題や魅力を洗い出す
  • 採用計画の立案
  • 求める人物像を明確に定義する
  • 採用基準・採用手法の見直し
  • 労働環境の改善
  • 選考
  • バックグラウンドチェック・リファレンスチェックを行う
  • 内定者フォロー

それぞれについて順を追って解説します。

自社の課題や魅力を洗い出す

まず、自社の採用にどのような課題があるのかを分析し、明確にします。

具体的には、以下のようなデータを分析し、課題を洗い出します。

  • 採用期間
  • 定着率
  • 採用コスト
  • 内定辞率 など

また、自社の強みを対外的に発信するためにも、既存社員へのインタビューなどを通じ、競合他社にはない「自社ならではの強み」を洗い出し、言語化します。

このとき、採用市場や競合他社がどのような条件を出しているかを比較し、客観的に自社の状況を把握することが大切です。

採用計画の立案

経営計画を踏まえ、いつ、どのような人材が何名必要かを明確にし、採用計画を策定します。

このとき、どのようなゴールを目指し、何を達成すればゴールとなるのかまで決めておきます。

こうすることで、自社が求める人物材像を定義しやすくなります。

求める人物像を明確に定義する

求める人物像を明確に定義します。

候補者の受け入れ予定先を巻き込み、どのような経験やスキル、志向性がマッチするのかなど、ハード面とソフト面までしっかり擦り合わせを行っていきます。

人物像を定義する際は「親切な人」などの表現ではなく、数字や具体的な行動で示しましょう。

採用基準・採用手法の見直し

過去の採用成功・失敗事例を分析し、採用基準や採用手法が適切かどうかを再考します。

また、ターゲット層がどのような媒体を目にするのかも踏まえて採用手法を選びましょう。

労働環境の改善

労働環境の改善を行います。

現場の不満を吸い上げ、労働環境や制度の改善に反映させます。

具体的には次の手順で行います。

  • 従業員調査などを通じて、職場の課題を吸い上げ、現状を把握する
  • 課題を特定し、優先順位をつける
  • 求める人材が働きやすい環境を踏まえ、課題に沿った改善策を実行する
  • 改善策実施後定期的に効果測定をする
  • 改善が見られない場合や新たな問題があれば改善を繰り返す

母集団形成

母集団形成

母集団形成とは、自社の求人に対して選考を希望する人材を集めることをいいます。

自社の魅力を適切な方法で発信すれば、自社に興味を持った人材を効率的に集めることができます。

具体的な方法としては以下のようなものがあります。

  • SNS発信
  • ダイレクトリクルーティング
  • 人材紹介
  • 求人媒体への掲載
  • 企業説明会
  • リファラル採用 など

自社の求める人物像に合わせた手法を選び、ターゲット層に刺さる言葉で自社の魅力を発信しましょう。

選考

採用基準に則り、選考を行います。

このとき、構造化面接などを取り入れることで、評価のブレを防ぎ、効率的に選考を進めることができます。

構造化面接については下記の記事を参考にしてください。

関連記事≫≫
構造化面接とは?半構造化面接との違いや導入手順、質問例、注意点

バックグラウンドチェック・リファレンスチェックを行う

書類と面接だけの選考方法では、候補者の主張に虚偽があった際にミスマッチが起きてしまう恐れがあります。

バックグラウンドチェックやリファレンスチェックなどの客観的評価を併用することで、ミスマッチ軽減につながります。

なお、バックグラウンドチェックとリファレンスチェックには以下のような違いがあります。

  • バックグラウンドチェック:候補者の主張に虚偽や乖離がないかを確認する
  • リファレンスチェック:候補者の前職にヒアリングを行い、候補者の実績や仕事ぶりに虚偽や矛盾がないかを確認する

客観的評価を併用することで採用の質を担保し、入社後のミスマッチを防ぎやすくなります。

内定者フォロー

内定者に対してフォローを行い、入社までの間に自社への志望度を高く維持してもらうことも大切です。

具体的な施策としては以下のようなものがあります。

  • 内定者向け社内見学
  • 内定者向け交流会
  • 内定者が気軽に連絡をとれる仕組みづくり
  • メールや電話による定期的な連絡 など

候補者の入社後は定着支援を行い、長く活躍してもらえるよう努めます。

まとめ

採用力について解説しました。

採用力を高めるためには、「自社の魅力を発信する力」「自社に適した人材を見抜く力」「人材を惹きつけ、定着させる力」が必要です。

ここでご紹介した内容を参考に長期的な視点で採用力向上に努めましょう。

もっとも、従来の書類と面接といった採用手法では、候補者の経歴や素の部分まで見抜くことは難しく、「自社に適した人材」を真の意味で見抜くことは困難といえます。

従来の採用手法にバックグラウンドチェックやリファレンスチェックなどの客観的評価を併用し、採用力向上につなげていきましょう。

※1 一般社団法人「日本採用力検定協会採用力検定について
※2 帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2025年10月)