フリーライダーを生まない組織へ:貢献意欲を高める採用・育成戦略
2025.08.01

仕事をまともにせずに報酬だけを受け取る従業員をフリーライダー社員といいます。
彼らはチームの一員でありながら、自分の責任や役割を果たさず、他人の努力に「ただ乗り」します。
これは職場の士気を低下させ、生産性を損ねるだけでなく、組織全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼします。
本記事では、採用段階から入社後の育成にいたるまでフリーライダーを生まない強い組織を作るための実践的な方法とポイントを解説します。
フリーライダーとは
リーライダーとは集団の利益にただ乗りすることをいいます。
企業におけるフリーライダー社員とはいわゆる給料泥棒と呼ばれる存在です。
フリーライダーは社会学や経済学でも使われる言葉です。
例えば、公共サービスは国民一人ひとりが納めた税金で成り立っています。これにより、一部のサービスは無料でサービスを受けることができています。
しかし、実際には税金を納めていない人もこれらの公共サービスの無料での利用が認められてきるのが現実です。
一方、フリーライダーと比較される言葉にローパフォーマーがあります。
ローパフォーマーはその名の通り、組織におけるパフォーマンスが悪い人材を言います。
意図的に他人にただ乗りしたり、仕事を放棄しようとしているとは限りません。
フリーライダー問題が注目される背景
フリーライダーという名前ではありませんが、「給料泥棒」と呼ばれる人は昔から存在していました。
では、なぜ今頃フリーライダー社員問題が注目されているのでしょうか。
この背景にはフリーライダー社員問題が注目されている理由のひとつに人口減少や業務内容、雇用形態の多様化があります。
組織で働く人の数が減り、従業員一人ひとりが抱えるタスクが増えたことから、フリーライダー問題が顕在化するようになりました。
フリーライダー社員の特徴

フリーライダー社員には以下のような特徴があります。
- 敢えて仕事に時間をかけ、スピードを遅くしている
- 仕事に対する責任感がない
- 成果を横取りし、失敗は他人に押しつける
- 業務に批判的な意見を持ち、仕事に消極的な姿勢である
- 自ら進んで仕事を探そうとはしない
- 周囲に負担をかけたうえで逃げようとする
- 部下や後輩社員への態度が横柄
それぞれについて下記で解説します。
敢えて仕事に時間をかけ、スピードを遅くしている
そのため、ひとつの仕事に対して敢えて時間をかけてスピードを遅くするという特徴があります。
時間をかけることで、一件真面目に仕事に取り組んでいるように見えますが、実際は怠けているのです。
もちろん、単に仕事が遅いだけという人もいるかもしれません。
しかし、いつまで経ってもそのような調子では、周りの士気が下がってしまいます。
仕事に対する責任感がない
フリーライダー社員は仕事に対する責任感がないというのも特徴です。
仕事でミスをしても気にせず放置したり、自分のミスを他人に押し付けたりするというのも特徴です。
自分のミスには甘いくせに、他人のミスには厳しく責めたて、自分の地位に固執する傾向もあります。
成果を横取りし、失敗は他人に押しつける
フリーライダーは自己顕示欲が強く、他人から認められないという意識が高い傾向があります。
そのため、他人の成果をさも自分の成果のように振舞うことがあります。
実力がなく、努力する気もないにも関わらず、自分の地位や名声に固執し、失敗の責任を問われると逃げたり、他人に押し付けたりするというのも特徴です。
業務に批判的な意見を持ち、仕事に消極的な姿勢である
フリーライダーは仕事量を増やしたくないため、新しい仕事や企画を批判したり、否定的な態度をとったりしてどうにか仕事を回避しようとします。
例えば以下のような発言や言動が多く見られる傾向があります。
- 「現状でうまく回っているから必要ない」
- 「工数が増えるだけだ」
- 「どうせうまくいかないだろう」
建設的な意見であれば、組織や周りのためになりますが、フリーライダーが批判する目的は保身です。
そのため、データやエビデンスを用いて説得したり、代替案を出したりすることはありません。
自ら進んで仕事を探そうとはしない
フリーライダーは最低限の仕事しかしようとしない傾向があります。
指示待ち・受け身姿勢が基本で、自ら仕事を探そうとしたり、周りのサポートをしたりする意欲がありません。
周囲に負担をかけたうえで逃げようとする
自分に降りかかった仕事を他人に押し付け、逃げようとするのもフリーライダーの特徴です。
本来は自分がやるべき仕事であっても、「それは〇〇さんが詳しいから「〇〇さんが早いから」などといって他人に仕事をふるのです。
また、急ぎで取り掛かるべき仕事があるにも関わらず、別の仕事を優先し、時間ギリギリになって助けが入るのを待ち、他人に押し付けて逃げようとすることもあります。
部下や後輩社員への態度が横柄
部下や後輩社員への態度が横柄で、高圧的な態度をとるのもフリーライダーの特徴です。
「雑用は後輩にやらせればいい」という考えがあるうえ、フォローや指導は一切しないため、組織の和を乱すことがあります。
フリーライダー社員がいることで組織に起こる問題

フリーライダー社員が組織にいることで起こりうる問題としては以下のようなものがあります。
- 新たにフリーライダー社員を生み出してしまう
- 優秀な社員の離職につながる
- 生産性が低下する
それぞれについて下記で解説します。
新たにフリーライダー社員を生み出してしまう
フリーライダーの存在を認めてしまうと、「真面目に仕事をするほうが損」「自分も怠けても問題ない」と考える従業員が出てくる可能性があります。
「仕事を怠けても良いのだ」と考えるようになることで、ほかの従業員が新たにフリーライダーになってしまう恐れがあります
優秀な社員の離職につながる
フリーライダーの存在によって溜まった仕事はすべて優秀な社員に割り振られます。
そのため、優秀な人材が業務過多によりストレスを抱えたり、やりたかった仕事に取り組めなくなることでやりがいを失ったりしてしまい、離職につながる可能性があります。
生産性が低下する
フリーライダーは組織への貢献度が低いため、組織全体の生産性を低下させます。
また、「怠けていても問題ない」「真面目に頑張るほうが損」という空気が生まれると、組織全体の士気が下がり、組織の成長が止まってしまいます。
なぜフリーライダー社員が生まれるのか
ここまで、フリーライダーの特徴や組織に及ぼす影響について解説しました。
そもそも、なぜフリーライダー社員が生まれてしまうのでしょうか。
主な原因には以下のようなものがあります。
- 年功序列・終身雇用制度
- 評価制度が社員の能力や成果に紐づいていない
- 業務量に対して人員が余剰である
それぞれについて下記で解説します。
年功序列・終身雇用制度
年功序列や終身雇用制度はフリーライダーの発生を助長します。
年功序列は個々のスキルや実績ではなく、年功を重視した評価システムです。
この制度下では、実績やスキルがなくても、勤務歴が長ければ順当に昇給できます。
そのため、自分のスキルを顧みる機会がなくなり、過大評価につながります。
また、終身雇用制度の場合、よほどのことがなければ解雇されることはありません。
積極的に仕事をとりにいったり、成果を上げたりしなくても、最低限の仕事をしていれば報酬を得ることができます。
そのため、自分の仕事に対する責任感が薄れてしまい、フリーライダー化してしまうのです。
評価制度が社員の能力や成果に紐づいていない
社員の能力や成果に紐づかない評価制度もフリーライダーを生み出す要因のひとつです。
このような制度下では、どれだけ社員が頑張って実績を上げても評価されないため、「貢献しても報われない」と感じてしまうことがあります。
その結果、「真面目に働いても損だ」と考え、貢献する意欲をなくし、フリーライダー化してしまうのです。
業務量に対して人員が余剰である
業務量に対して人員が余剰だと、フリーライダーが生まれやすくなります。この現象はメンバーシップ型雇用において顕著に見られます。
メンバーシップ型雇用の場合、景気や業績が悪化したり、事業方針を変更したりして余剰人員が生じても、そう簡単には解雇ができません。
整理解雇はできますが、条件が厳しいため、最終的には異動や転勤で対応することがほとんどです。
異動や転勤を行っても、組織全体としては人員が余剰であることに変わりはないため、仕事を怠けることができてしまう状況になってしまいます。
フリーライダー問題を回避する方法

フリーライダー問題を回避する方法には以下のようなものがあります。
- 一人ひとりの仕事内容を可視化する
- 貢献度に応じた評価制度の整備
- 定期的な面談の実施
- 人員数や配置を見直す
- OKRによる目標設定
- トップマネジメントの実施
- 人材教育を見直す
- 採用手法を見直す
それぞれについて下記で解説します。
一人ひとりの仕事内容を可視化する
フリーライダーを生み出さないためには、社員一人ひとりが仕事をさぼることができない環境を作ることが大切です。
社員一人ひとりの仕事内容や進捗状況を可視化し、いつ誰がどのような仕事をしているのか、把握できる仕組み作りを行いましょう。
可視化することにより、仕事が遅い人を見出すことにつながります。
仕事が遅い理由が教育不足なのか、単にサボっているのかによって、適切な対応方法が変わります。
仕事が遅い人を見出し、仕事が遅い理由を調べれば適切に対応することができます。
なお、可視化の方法としては以下のようなものがあります。
- 日報の作成
- 業務管理ツールの活用 など
貢献度に応じた評価制度の整備
組織に貢献した従業員が正当に認められるように評価制度を整備することも重要です。
まずは年功序列による評価制度を廃止することから検討しましょう。
評価制度を見直す際は、成果だけでなく、成果を出すまでの過程や姿勢も評価の対象に入れると良いでしょう。
こうすることで、ミスや失敗があった社員であっても、その後の取り組みで昇進機会が得られることになるため、モチベーション向上につながります。
定期的な面談の実施
定期的に面談を実施するというのも有効です。
2週に1回、月に1回程度で、1on1ミーティングとして上司と部下で面談を行います。
定期的に面談を実施することで仕事の進捗を可視化することにもつながります。
上司と部下の信頼関係も築かれやすくなりますし、従業員側が自分の仕事の仕方を見直すことにもつながります。
人員数や配置を見直す
業務量に対して適切な人員配置ができていない場合は一部の人材に業務が偏ってしまう恐れがあります。
これにより、仕事をしない人材が生まれてしまいます。
社員の実績や勤務態度を踏まえ、人員配置を見直すことが重要です。
OKRによる目標設定
従業員のフリーライダー化を防ぐためにはOKRによる目標設定も有効です。
OKR(Objectives and Key Results)とは、目標と主要な成果を定める目標管理手法のひとつです。
すぐに達成するのが難しそうな目標と、その目標を達成するために求められる結果を成果指標として設定する手法です。
例えば、目標がチームの業務効率向上であれば、「プロジェクト完了までの時間を〇〇%短縮」といったものが成果指標の例になります。
一般的に、目標設定は「売上を上げる」「業務効率化を図る」など、曖昧なゴールだけが注目されます。
目標が曖昧だと、仕事をさぼりやすいため、フリーライダー化が進む恐れがあります。
OKRによる目標設定であれば、具体的な数字で成果指標を設定するため、目標達成までの道筋を立てやすく、失敗したときの軌道修正や原因究明がしやすくなります。
従業員ごとにOKRで目標設定を行うことで、フリーライダー化の抑制につながります。
トップマネジメントの実施

トップマネジメントの実施も有効です。
トップマネジメントとは、組織のトップが組織運営や経営計画の作成などを行う仕組みです。
管理職がマネジメントを行う基盤を構築でき、適切な人員配置や業務分担の見直しを徹底して行うことができます。
これにより、従業員一人ひとりが責任を持って自分の仕事に取り組めるようになります。
人材教育を見直す
フリーライダーが生まれる原因のひとつに人材教育が十分でないことがあります。
人材教育は会社の規模や業種によって定期的に実施しているところもあれば、全く実施していないところもあります。
定期的に人材教育を行うことで、従業員がスキルを身に着けられるようになり、モチベーション向上につながります。
また、業務を効率的に進められるようになったり、「自分には難しい」「できない」などの言い分けを抑制したりする効果も期待できます。
採用手法を見直し、貢献意欲を事前に見抜く
フリーライダー社員は自社にミスマッチな人材であった可能性もあります。
そのため、フリーライダー社員の採用面接時の評価を元に採用手法を見直し、今後の採用を防ぐことも重要です。
どのような条件、評価の人材を採用した結果、社員がフリーライダー化してしまったのかを検証しましょう。
また、面接の際は候補者の自己成長意欲や具体的な貢献意欲を見抜くことも重要です。
例えば、以下のような質問を行うことで候補者の貢献意欲を見抜きやすくなります。
確認したい意欲 | 質問例 |
---|---|
自己成長意欲 | 「これまで最も力を入れて取り組んだこと、また、そこから何を学んだかを教えてください」 「自己成長のために、日常的にどのようなことに取り組んでいますか」 |
貢献意欲 | 「入社後にどのように貢献したいと考えていますか」 「チームの士気を高めるためにはどのようなことが大切だと考えますか」 |
具体的な質問例は下記の記事もご覧ください。
参考記事≫≫
構造化面接とは?半構造化面接との違いや導入手順、質問例、注意点
なお、候補者本人が主張する内容は虚偽である可能性もあります。
フリーライダー社員は他人の成果を横取りすることがあります。
候補者が主張する実績は、他人の成果を横取りしたものかもしれません。
また、前職でも同様のトラブルを起こしていたかもしれません。
この場合、採用時に見抜くことができれば、フリーライダー化する社員の入社を防げたかもしれません。
バックグラウンドチェックやリファレンスチェックを併用し、候補者本人の経歴や実績、前職での働きぶりを確認しておくことをおすすめします。
まとめ
フリーライダー問題について解説しました。
フリーライダー社員を放置すると、優秀な人材の離職や組織の生産性低下につながってしまいます。
ここで紹介した内容を参考に、会社をあげてフリーライダーを生み出さない取り組みを行っていきましょう。