バックグラウンドチェックとは?調査内容と流れ、注意点を解説
2024.04.09
バックグラウンドチェックとは、採用活動の一環で採用候補者の経歴や身辺に関する調査を行うことを言い、採用調査や雇用調査と呼ばれることもあります。
海外や外資系企業では一般的ですが、最近は日本国内でも取り入れる企業が増えています。
この記事では、
- バックグラウンドチェックとは何か
- バックグラウンドチェックの目的
- バックグラウンドチェックの調査内容
- バックグラウンドチェックを実施する流れ
- バックグラウンドチェックの注意点
について解説します。
バックグラウンドチェックとは
バックグラウンドチェックとは、採用候補者の経歴や身辺、本人の説明に虚偽や問題がないかを調査することを言います。
入社後に問題を起こしたり、期待を下回るパフォーマンスで業務に支障が生じたりするなど、会社に不利益を与える恐れのある人物の採用を未然に防ぐために行います。
採用候補者が提出した書類に記載されている内容に虚偽がないか確認する場合、候補者本人に証拠書類の提出を求めたり、第三者機関に調査を依頼するなどして確認します。
バックグラウンドチェックの目的
バックグラウンドチェックの主な目的は次の2つです。
- 企業防衛
- 採用の公平性
以下でそれぞれについて解説します。
企業防衛
バックグラウンドチェックを行う目的の一つは企業防衛です。
問題行動を起こす人物を採用すると、社内に混乱を招いたり、業務遂行に支障が出る恐れがあります。
また、期待を大きく下回るパフォーマンスである場合、業務上の損害が生じる恐れもあります
採用候補者に犯罪歴や問題行動がないかを採用前に確認することで、採用後のトラブルを防止する目的があります。
バックグラウンドチェックは海外では頻繁に行われており、国内でも外資系や金融系企業において実施されるケースがありました。
最近はコンプライアンスやネットリテラシーの意識の高まりから、バックグラウンドチェックを実施する企業が増えています。
以前は役職者などのハイキャリアの転職者のみ実施することが多い傾向がありましたが、最近は一般社員や新卒採用においてもWebやSNSでの行動について調査する傾向があります。
採用の公平性
履歴書は求職者本人が記入するため、学歴や経歴詐称が可能です。面接でも不都合なことを伝えず、隠し通すことができてしまうのが現状です。
誠実に対応した候補者と、学歴や経歴詐称、隠蔽、誇張をした候補者がいる場合、書類選考と面接だけでは公平な採用を行うことが難しくなります。
バックグラウンドチェックを行うことで情報の正確性を担保し、公平な採用につなげる目的があります。
バックグラウンドチェックのメリット
バックグラウンドチェックのメリットは大きく以下の二つになります。
- 企業コンプライアンスの強化
- 採用の強化
それぞれ以下で解説します。
企業コンプライアンスの強化
昨今、企業イメージやブランド力が重視されるようになりました。たった一人の問題社員やモンスター社員による問題行動によって企業が被る損失は以前より大きくなっています。
また、SNSの普及により、問題行動が流布されるスピードも速くなっています。
問題を起こしかねない候補者の採用を未然に防ぐことで、企業イメージ損失リスクを回避しやすくなります。
採用の強化
バックグラウンドチェックを継続することで、採用側も採用候補者を見極める力が備わり、精度が高まります。
その結果、自社の採用力を高めることにつながります。
バックグラウンドチェックの調査内容
バックグランドチェックの調査内容は主に下記8つです。
経歴相違(学歴・職歴)
履歴書に記載されている入学卒業年月や学位について、採用候補者に卒業証明書や資格証明書の提出を求めて照合したり、過去に在籍していた職場に問い合わせたりして確認します。
また、履歴書や職務経歴書に記載されている勤務企業の入退社日、雇用形態、職務内容に間違いがないか、採用候補者に源泉徴収票の提出を求めたり、過去の勤務先に問い合わせたりして情報に相違がないか確認します。
前職状況
前職での勤務態度や実績、勤怠について前職の関係者に電話やオンラインアンケートなどで確認します。
このとき、誰に確認するかを採用候補者が指定できるケースもあります。
前職の状況確認のことをリファレンスチェックと呼ぶこともあります。
登記情報
法務局で一般公開されている登記簿で不動産の所有状況を確認します。採用候補者が所有する不動産が差し押さえられている場合、登記簿で確認することができます。
民事訴訟歴・破産履歴
一般公開されている最高裁判所の判決記録や調査会社のデータベース、新聞などのメディア情報から民事訴訟歴を調べます。
また、破産歴については官報に掲載されている自己破産の情報を確認します。
なお、最高裁判所以外の判決記録は、バックグラウンドチェックを目的として調査するのは仕組上困難です。
犯罪・軽犯罪歴
企業防衛の意味でも犯罪・軽犯罪歴の有無は非常に重要です。
現在の日本では犯罪歴は非公開となっているため、SNSやWeb、新聞などの各種メディアから犯罪歴の有無を確認します。
Web・SNS調査
WebやSNSで採用候補者の名前を検索し、過去に大きなトラブルがないか、社会人として不適切な行為や発言をしていないか確認します。
SNSでは採用候補者のプライベートで見せる性格や交友関係までわかることもあります。
近隣調査
調査会社によっては、対象者の近隣調査を行うこともあります。
採用候補者の生活状況を近隣住民に聞き込み、日頃の生活状況や共重実態を確認します。
反社チェック
反社会的勢力との繋がりの有無は企業防衛の意味において非常に重要です。
採用候補者が反社会的勢力とつながりがないか、メディア情報や反社チェックサービスなどを使って調査します。
リファレンスチェックとの違い
バックグラウンドチェックと似たような言葉にリファレンスチェックというものがあります。
前述のとおり、リファレンスチェックはバックグラウンドチェックの手法の一つです。
採用候補者の前職の関係者に聞き込みを行い、面接や書類だけではわからない候補者の人物像や実績を確認し、自社にマッチする人物かどうかをチェックする目的で行います。
両者は明確に区別されているわけではなく、バックグラウンドチェックのなかにリファレンスチェックが含まれるケースもありますし、リファレンスチェックのなかで経歴に虚偽がないかを確認するためにバックグラウンドチェックを行うケースもあります。
バックグラウンドチェックの流れ
バックグラウンドチェックの流れは以下となります。
- バックグランドチェックの実施方法を決める
- バックグラウンドチェックへ同意
- 採用企業が調査会社へバックグラウンドチェックを依頼
- バックグラウンドチェック実施
- レポーティング
それぞれ、順を追って説明します。
バックグランドチェックの実施方法を決める
バックグラウンドチェックの方法は大きく以下の2つがあります。
- 自社で行う
- 調査会社を利用する
一つ目は自社のリソースを使ってバックグラウンドチェックを行う方法です。採用候補者と調査を行うことについてやり取りし、状況によっては候補者の前職(または現職)に電話などで確認します。
調査会社を利用しないため、費用は発生しませんが、担当者の業務負担が増えることになります。
また、バックグラウンドチェックは法令を遵守しながら実施する必要があるため、採用効率が悪くなる恐れもあります。
二つ目は調査会社を利用する方法です。コストはかかりますが、知識やノウハウを持った調査員が調査を行うため、細やかなレポーティングが期待できます。
また、最近はオンラインで簡潔するバックグラウンドチェックサービスも増えています。この場合、簡単な情報入力を行うだけで始められ、関係者への連絡や同意の取得もWeb上で済むため、スピーディに調査を実施できます。
バックグラウンドチェックへ同意
バックグラウンドチェックは採用候補者の個人情報を扱います。
個人情報保護法に抵触しないよう、企業がバックグランドチェックを行うことについて、事前に候補者から同意を得る必要があります。
これはリファレンスチェックについても同様です。
採用企業が調査会社へバックグラウンドチェックを依頼
採用候補者について調査したい内容を決め、調査会社へバックグランドチェックを依頼します。
採用候補者について確認したい項目や手法について、調査会社と十分にすり合わせを行います。
バックグラウンドチェック実施
調査会社が企業と擦り合わせた内容を基に、採用候補者の調査を行います。
採用候補者の関係者に聞き込みを行ったり、独自のデータベースを活用したりすることで調査を進めていきます。
また、採用候補者本人に卒業証明書や前職の在籍証明書、退職証明書などの提出を求め、応募書類に記載されている内容と相違がないか確認します。
なお、調査方法や入手できる情報は調査会社によって異なり、費用も異なります。
レポーティング
調査した内容を調査会社がレポートにまとめます。レポートは企業の採用関係者のみに共有され、採用判断の情報として活用されます。
バックグラウンドチェックの費用と期間
バックグラウンドチェックを調査会社に依頼した際の費用は、職歴や学歴などの基本的な調査のみの場合3~5万円程度が相場です。
より詳細な調査を行う場合は1名につき5~10万円が相場です。
なお、バックグラウンドチェックを依頼してからレポートを受け取るまでの期間は数日から1週間程度というのが一般的です。
調査会社によっては、基本的な項目のみであれば二日程度で結果がわかることもあります。
また、調査会社によって調査内容に応じて様々なコースを設けていたり、調査項目をカスタマイズできたりするケースもあります。
バックグラウンドチェックを実施する際の注意点
バックグラウンドチェックを実施する際の注意点は主に下記の3つです。
- 法的リスク
- 候補者から同意が得られない場合の対処法
- 内定を取り消すことができるか
それぞれ詳しく解説します。
法的リスク
バックグラウンドチェックは正しい手順・正しい方法で行えば法的な問題はありません。
ただし、調査項目によって個人情報保護法などの法令を遵守する必要があります。特に要配慮個人情報に該当する個人情報は取扱に注意が必要です。
要配慮個人情報とは、不当な差別や偏見その他の不利益が生じないよう、取扱いに特に配慮が必要なものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報を指します(個人情報の保護に関する法律第2条第3項)。
例えば、以下のようなものが要配慮個人情報に該当します。
- 本人の人種
- 思想・信条
- 社会的身分
- 病歴
- 犯罪歴
- 犯罪により被害を受けた事実
- その他本人に対する不当な差別・偏見・不利益が生じないように政令で定められたもの
この法律において「要配慮個人情報」とは、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報をいう。
上記の項目を調査する際は本人の同意が必要なため、同意なく情報を取得すると違法になります。
法律に抵触せず調査を行うためには、当該分野に関する知識と経験が不可欠です。
バックグラウンドチェックを実施する際は自社で行うより、適切な調査会社に依頼するほうが良いでしょう。
候補者から同意が得られない場合の対処法
バックグラウンドチェックは対象者の承認が必要です。そのため、採用候補者から同意が得られない場合はバックグラウンドチェックを実施することはできません。
バックグラウンドチェックを拒まれた際は、調査が必要な理由について丁寧に説明を行いましょう。同時に候補者がバックグラウンドチェックを拒む理由についても聞いてみると良いでしょう。
例えば、候補者が前職に在籍中で、転職活動を知られたくないという場合は前職に関する項目以外のみ調査を行うという方法もあります。
なお、バックグラウンドチェックの目的は採用すべきでない人を見抜き、企業コンプライアンスを強化することにあります。
バックグラウンドチェックを拒否された場合、候補者の経歴の虚偽があったり、不利になる情報を隠していたりする可能性もあります。
バックグラウンドチェックを拒む理由に合理性がない場合は、採用しないことも視野に入れましょう。
内定を取り消すことができるのか
バックグラウンドチェック後に内定を取り消すことはできないのが原則です。
内定は「就労始期付解約権留保付労働契約という契約が締結された」という考えが確立されており、内定取り消しを行うと解雇として扱われます。
逆に、バックグラウンドチェックを行った結果、合理的な理由があれば内定取り消しは可能とも言えます。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
なお、合理的な理由としては例えば以下のようなものがあります。
- 提出書類に虚偽がある
- 反社会的勢力とのつながりが発覚した
- 暴力事件への関与があった など
ただし、合理的な内容であっても、内定を取り消すことで権利濫用が問われる恐れもあり、内定取り消しは難しいと言わざるを得ません。
トラブルを回避するためにも、内定前にバックグラウンドチェックを済ませておきましょう。
まとめ
バックグラウンドチェックは、採用候補者の経歴や身辺、本人の説明に虚偽や問題がないかを調査し、会社に不利益を生じかねない人物の採用を未然に防ぐ目的で行います。
SNSの普及により、一人の従業員の不用意な発信で企業イメージやブランドが損なわれる恐れがあり、採用候補者のリテラシーや人格を見極めることへの重要性が高まっています。
一方、バックグランドチェックの調査項目には法律に抵触する可能性がある内容もあるため、信頼できる調査会社に依頼することをおすすめします。
レキシルは経験豊富な調査会社のクオリティをリーズナブルな価格でご提供しております。
また、レキシルのリファレンスチェックは採用候補者から同意を得るだけ、推薦者を選択するのではなく、不特定多数の方から候補者の情報を公平に取得できます。
ぜひご活用ください。