リファレンスチェックのなりすましを防ぐ! 採用企業側の対策と注意点
2025.08.18

採用活動では、候補者の経歴やスキルを正確に把握しなければ採用ミスマッチが起きてしまいます。
これを防ぐ目的で近年注目を集めているのがリファレンスチェックです。
リファレンスチェックとは、採用プロセスにおいて、候補者の過去の勤務先の上司や同僚に候補者の勤務態度や実績、人柄などを問い合わせる調査をいいます。
しかし、このリファレンスチェックにおいて候補者やその知人が情報提供者(推薦者)になりすまし、パスしようとするケースがあるのです。
リファレンスチェックのなりすましが起きると、企業は正しい評価ができず、本来の目的である採用のミスマッチを防ぐことができなくなります。
この記事では、リファレンスチェックにおけるなりすましの主な手口やなりすましが起きる原因、またそれを未然に防ぐための具体的な対策について詳しく解説します。
リファレンスチェックの信頼性を揺るがす「なりすまし」の実態
リファレンスチェック(Reference check)とは、候補者が申告した情報提供者(または推薦者)に対し、候補者の勤務態度やスキル、人柄などについてヒアリングを行う調査をいいます。
書類選考と面接だけではわからない客観的な情報を得ることで、採用ミスマッチを防ぐために行います。
しかし、客観的な情報を得ることで情報の信頼度を高めるはずのプロセスが、「情報提供者(推薦者)のなりすまし」によって信頼性が崩れてしまうケースがあるのです。
リファレンスチェックのなりすましの手口とは
リファレンスチェックのなりすましの手口には主に次の2パターンがあります。
- 候補者本人が情報提供者(推薦者)になりすます
- 友人や知人に情報提供者(推薦者)へのなりすましを依頼する
それぞれについて下記で解説します。
候補者本人が情報提供者(推薦者)になりすます
ひとつ目の手口が、候補者本人が情報提供者(推薦者)になりすますものです。
候補者自身が、すでに退職している元同僚や元上司の名前を使い、自分自身を推薦する形で電話やオンラインでのヒアリングに応じます。
友人や知人に情報提供者(推薦者)へのなりすましを依頼する
二つ目の手口は候補者が友人や知人に情報提供者(推薦者)へのなりすましを依頼するものです。
候補者の友人や知人が、あたかも元上司や元同僚であるかのように振る舞い、候補者に都合の良い情報を伝えます。
なぜなりすましが発生するのか? その背景にあるものとは

なりすましを防止するためにも、なぜなりすましが発生するのか、その背景を知る必要があります
リファレンスチェックのなりすましが発生する理由やその背景には次のようなものがあります。
- 採用競争を勝ち抜きたい
- 経歴詐称など不都合な事実を隠蔽したい
- 依頼できる情報提供者(推薦者)がいない
- 転職活動の事実を現在の職場に知られたくない
それぞれについて下記で解説します。
採用競争を勝ち抜きたい
優秀な人材を確保したいという企業のニーズが高まる一方、競争を勝ち抜くために、候補者側も自分を有利に見せようとする動機が働くことがあります。
リファレンスチェックで自分に不都合な事実が会社に知られれば、選考を通らないのではないかと考えることもあるでしょう。
しかし、リファレンスチェックを拒めば、企業側が不審に思うのは明らかです。
そのため、なりすましを行い、選考を通過しようとするのです。
経歴詐称など不都合な事実を隠蔽したい
候補者が「経歴や職務内容に虚偽の申告をしている」「前職で問題行動を起こした」という場合、それを隠蔽するためになりすましを利用することがあります。
また、短期間の転職を繰り返しているケースや服役していたケースなど、履歴書に記載しにくい項目がある場合もなりすましを利用するケースがあります。
依頼できる情報提供者(推薦者)がいない
依頼できる情報提供者(推薦者)がいないなどの理由で、候補者がなりすましを利用するケースもあります。
例えば、以下のようなケースです
- トラブルを起こして退職した
- 辞め方が悪くて連絡しづらい
- 前職の人間関係が良くない
悪質な理由だけでなく、「前職に迷惑をかけたくない」「相手の仕事を増やしたくない」という理由でなりすましを考えることもあるようです。
転職活動の事実を現在の職場に知られたくない
候補者の多くは現在の勤務先に内緒で転職活動を行っています。
そのため、現職の上司や同僚にリファレンスチェックが依頼されると、転職活動をしていることがバレてしまいます。
特に、現職の職場から退職を引き留められている場合、「転職しないよう、リファレンスチェックで不利なことを言われるのではないか」と不安になるかもしれません。
このように、現在の職場に転職の事実を知られたくないという場合もなりすましを利用することがあります。
リファレンスチェックのなりすましを防ぐための対策と注意点

なりすましのリスクを最小限に抑え、リファレンスチェックの信頼性を高めるための具体的な対策と注意点を5つご紹介します。
- 候補者に十分な事前説明を行い、同意を得る
- 事情がある場合は柔軟に対応する
- 情報提供者(推薦者)情報を多角的に確認する
- 複数の情報提供者(推薦者)からヒアリングを行う
- リファレンスチェック調査会社の活用を検討する
それぞれについて下記で解説します。
候補者に十分な事前説明を行い、同意を得る
リファレンスチェックを実施する際は、必ず事前にその目的と方法を候補者に明確に説明し、同意を得ておきましょう。
調査の透明性を高めることで、候補者側も誠実な情報提供を心がけるようになります。
リファレンスチェックを実施することで、候補者側にもメリットがあることも伝えておけば、候補者側の不安軽減につながります。
具体的には以下のような内容を伝えると良いでしょう。
- リファレンスチェックを行う目的は情報提供者(推薦者)からの客観的な視点で候補者の実績や強みを把握することであり、ふるい落とすことが目的ではないこと
- やむを得ない事情があれば、リファレンスチェックを拒否できること
- リファレンスチェックを実施することで、適材適所の配置ができ、候補者に適した働き方ができること など
事情がある場合は柔軟に対応する
リファレンスチェックについて説明を行い、同意を得る際は、実施にあたって懸念事項がないか、不安材料がないかも併せて確認しましょう。
特に「リファレンスチェックを拒否したい」と言われた場合は、リファレンスチェックを行う目的を丁寧に説明します。
また、懸念点がある場合は柔軟に対応することも大切です。
リファレンスチェックの実施にあたって、候補者が懸念する内容と対応策としては以下のような例があります。
- 上司や同僚が退職済み→別の同僚や上司、後輩に依頼する
- 職場の人数が少ない→取引先に依頼できないか検討する
- 転職活動を知られたくない→その前の職場に依頼する
情報提供者(推薦者)情報を多角的に確認する
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情報提供者(推薦者)自身の情報が正しいかについても、複数の方法で多角的に確認しましょう。
一般的には本人確認書類を提出してもらう方法があります。
情報提供者(推薦者)の会社の名刺や社員証の写真や画像を提出してもらい、その企業に勤務している人物かどうかを確認します。
そのほか、企業公式のウェブサイトや企業公式SNS、 LinkedInなどのビジネスSNSで確認するのも良いでしょう。
これらを使って、情報提供者(推薦者)が現在もその企業に在籍しているか、役職は正しいかなどを確認します。
複数の情報提供者(推薦者)からヒアリングを行う
リファレンスチェックを実施する際は、できるだけ異なる立場(上司、同僚など)の複数の推薦者から情報を得ることが望ましいでしょう。
複数人から情報を得ることで客観性が増し、多面的な評価が可能になりますし、情報の信頼性が高まり、集まる情報の範囲も増えます。
特定の情報提供者(推薦者)から極端に良い評価または悪い評価が得られた場合、なりすましだけでなく、本人の主観が入っている恐れもあります。
この場合も複数人から多面的な評価を得ることで、偏った判断を避けることにつながります。
また、複数人に依頼すれば、依頼した情報提供者(推薦者)のうちのひとりが回答を拒否した場合でも、ほかの人から情報を得ることができます。
なお、情報提供者(推薦者)が多すぎると工数がかかったり、管理が煩雑になってしまったりする恐れがあります。そのため、2、3名に依頼するのが望ましいでしょう。
リファレンスチェック調査会社の活用を検討する
リファレンスチェックは正しく実施しなければ違法になる恐れがあります。
リファレンスチェックの正しい知識やリファレンスチェックのなりすましを見抜くノウハウ・リソースが自社に不足している場合は、リファレンスチェックを専門とするサービス提供会社への依頼も有効な選択肢のひとつです。
リファレンスチェックの専門会社なら、情報提供者(推薦者)の本人確認や情報の信憑性のチェック体制も整っていますし、専門知識やノウハウがあるため、安心です。
リファレンスチェックのなりすましを見抜く方法

防止策を徹底して行ったからといって、完全になりすましを防げるとは限りません。
リファレンスチェック実施中もなりすましが起きていないか注意する必要があります。
リファレンスチェックのなりすましを見抜く方法としては大きく次の3つがあります。
- 情報提供者(推薦者)の本人確認を行う
- 情報提供者(推薦者)しか知らない情報について質問する
- 情報提供者(推薦者)のメールアドレスドメインを確認する
それぞれについて下記で解説します。
情報提供者(推薦者)の本人確認を行う
なりすましを見抜くには情報提供者(推薦者)の本人確認を行うことが重要です。
本人確認の方法としては以下のようなものがあります。
- 名刺や社員証など顔写真付きの本人確認書類の画像の提出を求める
- 「住所」「生年月日」「写真」など可能な範囲で個人情報の確認を行う
- 情報提供者(推薦者)の所属する組織や役職を確認する
- 推薦者の職場に電話をかけて在籍確認をする
- 本人確認機能付きのウェブサービス(eKYC搭載のウェブサービスなど)を利用する など
情報提供者(推薦者)しか知らない情報について質問する
情報提供者(推薦者)しか知らない情報について質問することも有効な手段です。
具体的な例をご紹介します。
例 | 説明 |
---|---|
具体的なエピソードを深掘りする | 「〇〇さんの印象はいかがでしたか?」といった漠然とした質問ではなく、具体的な行動や成果に関する質問を投げかける。または候補者と情報提供者(推薦者)がどのような業務にどのような関わり合いをしたのか、ほかにどのようなメンバーが在籍していたのかを掘り下げて聞いてみる。 質問例:「〇〇さんがチームの課題解決に貢献した具体的なエピソードがあれば教えてください」 |
社内用語や固有名詞をさりげなく使う | 質問の中に、その企業特有の社内用語やプロジェクト名、製品名や顧客名などを意図的に盛り込み、推薦者がスムーズに理解し、回答できるかを確認する。 |
なお、ヒアリングする際は不自然な沈黙や間合いがないかについても注視しましょう。
回答に不自然な間があったり、言葉を選ぶのに時間がかかったりした場合はなりすましを疑ったほうが良いでしょう。
また、詳細なエピソードが出てこない、内容が曖昧といったケースも注意が必要です。
情報提供者(推薦者)のメールアドレスドメインを確認する
情報提供者(推薦者)のメールアドレスに企業の独自ドメインが含まれているか確認することも有効です。
これをすることで、他社ではなく、その企業に属する人物による回答であることを確認できます。
なりすましを防いでリファレンスチェックを行うならレキシルへ
リファレンスチェックのなりすましの手口や防ぐ方法について解説しました。
リファレンスチェックのなりすましを防ぐためには、以下の点に注意しましょう。
- 候補者に十分に事前説明を行い、同意を得る
- 何か事情がある場合は柔軟に対応する
- 情報提供者(推薦者)の本人確認を徹底して行う
- 複数の情報提供者(推薦者)にヒアリングを行う
本記事でご紹介した対策を参考に、貴社のリファレンスチェックプロセスを見直し、ミスマッチのない採用活動を実現してください。
自社にリファレンスチェックのノウハウやリソースがない場合は本人確認を確実に実施しているリファレンスチェック専門業者に依頼することをおすすめします。
「なりすましを徹底的に防いでリファレンスチェックを実施したい」
そんなときは、レキシルのリファレンスチェックがおすすめです。
レキシルの提供するリファレンスチェックの流れは下記のとおりです。
- 候補者の前職以前の人事部や所属部門に電話にてアクセス
- 求職者情報を持っているか確認し、候補者についてヒアリングを行う
このように、レキシルのリファレンスチェックは、誰か特定の人物に対してアクセスするわけではありません。そのため、なりすましが事実上不可能です。
バックグラウンドチェックと併せて行えば、採用精度が高まり、ミスマッチ防止につながります。
「採用のミスマッチを防ぎたいけどリファレンスチェックのなりすましが心配」という採用担当の方はぜひレキシルにお問い合わせください。