ハロー効果とは?採用面接での具体例と対策をわかりやすく解説
2024.09.02
ハロー効果とは、ある対象を評価する際、一部の特徴的な印象に引きずられて全体評価をしてしまう心理現象です。
採用活動では、採ってはいけない人材を採らないこと、適切な人材を採用することが非常に重要です。
しかし、採用プロセスでハロー効果が生じると、判断を誤ってしまい、採用のミスマッチが起きる可能性があります。
この記事を最後まで読むことで以下のことがわかります。
- ハロー効果とは何か
- ハロー効果と他の評価エラーとの違い
- 採用プロセスにおけるハロー効果の起きやすい場面
- ハロー効果の具体例
- ハロー効果を回避する方法
ハロー効果とは
ハロー効果(halo effect)とは、社会心理学の用語で、ある対象を評価する際、それが持つ
一部の特徴的な印象に引きずられて全体の評価をゆがめてしまう現象を言います。
ハロー効果はアメリカの心理学者エドワード・ソーンダイクが1920年に論文「A Constant Error in Psychological Ratings」で紹介した概念です。
心理学用語ではありますが、近年、人事評価や採用面接などにおいて改めて注目度が高まっています。
なお、haloは聖人や天使の頭上に光が差す後光・光輪を意味します。そのため、halo効果は後光効果とも呼ばれることもあります。
ハロー効果の身近な例
恋愛に関することわざで「あばたもえくぼ」があります。
これは好意を持つ相手には、短所(あばた)も長所(えくぼ)に見えてしまうことを言います。
つまり、好意的な印象に引きずられ、他の側面や全体の評価をしてしまうハロー効果となります。
好感度の高い芸能人がCMに多く起用されるのも、ハロー効果を狙った手法と言えます。
ハロー効果の種類
ハロー効果には以下の2つの種類があります。
- ポジティブ・ハロー効果
- ネガティブ・ハロー効果
それぞれ以下で解説します。
ポジティブ・ハロー効果
ポジティブハロー効果とは、一部の良い特徴が全体の評価にプラスで働くことを言います。
典型的な例として「有名大学出身だから優秀に違いない」「取得が難しい資格を取得しているから業績を上げてくれるに違いない」などがあります。
ネガティブ・ハロー効果
一部の悪い特徴が全体の評価をマイナスな方向にゆがめてしまうことを言います。
例えば、「見た目が冴えないので仕事ができなさそう」「服にゴミがついていたから仕事も雑に違いない」などがあります。
ハロー効果とピグマリオン効果の違い
ピグマリオン効果は評価される側(候補者)が評価する側(面接官)から期待されることで変化をすることを言います。
一方、ハロー効果は評価する側(面接官)が評価される側(候補者)の特徴に影響を受けるものを言います。
ハロー効果とホーン効果の違い
ホーン効果は対象者の頭に悪魔の角が生えているかのように、一部の悪い特徴に引きずられて全体評価がマイナス方向へ傾く現象を言います。
ホーン効果は前述のネガティブ・ハロー効果と同義になります。
ハロー効果以外の評価エラー
人事・採用分野においては、ハロー効果以外にも評価エラーや評価誤差が生じる恐れがあります。
ハロー効果以外の評価エラーには主に以下の7つがあります。
- 確証バイアス:自分の経験から得た仮説により、それに基づく特徴で評価したり、仮設に合わない情報を排除すること
- 類似性バイアス:出身地や出身校など、自分と属性が似ている人を高く評価すること
- 中央化傾向:足並みをそろえて評価を中央値に寄せてしまう心理現象。5段階評価なら「3」に寄せてしまう心理現象
- 寛大化傾向:周りから嫌われないように全体的に甘めな評価をつけてしまう心理現象。5段階評価なら「4」「5」に寄せてしまう心理現象
- 逆算化傾向:最初に総合評価を決めてから帳尻を合わせるように各項目の評価をすること。評価者の思惑が強く表れる
- 近隣誤差:直近の評価結果の影響が全体の評価におよぶこと
- 対比誤差:評価者(面接官)の能力を基準として評価すること
採用プロセスにおけるハロー効果の起きやすい場面
ハロー効果は面接のときだけに起こると思われる傾向があります。
しかし、実際には以下のように様々な場面で影響を受けやすいと言われています。
- 採用基準の作成
- 採用広報
- 書類選考
- 面接
- 候補者への連絡
それぞれ順を追って解説します。
採用基準の作成
採用活動では自社の求める人材に沿った採用基準を決める必要があります。
採用基準を担当者だけで決めてしまうと、「有名企業での勤務歴が〇〇年以上」「有名大卒以上」といったハロー効果の影響を大きく受ける可能性があります。
現場や経営層も交えて採用基準を決めることで、自社に合った基準に近づけることができます。
採用広報
採用広報とは、自社で働くイメージを持ってもらえるように情報発信することを言います。
採用広報では、まず採用広報の目的とターゲット層を定義する必要があります。
このとき、どのような人材をターゲットにするかによって用いる手法や媒体が異なります。
定義が曖昧だったり、採用担当者だけで採用広報を実施すると、自社の求めるターゲット層にリーチしなくなる恐れがあります。
書類選考
書類選考は学歴や職歴、年齢、資格などによって候補者の評価をゆがめる恐れがある場面です。
特に評価が歪みやすい要素には以下のようなものがあります。
- 大手企業勤務歴がある
- 有名大学を卒業している
- 帰国子女である
- 難易度の高い資格を取得している など
面接
採用面接は面接官がハロー効果の影響を最も受けやすい場面です。
特に以下の要素で影響を受ける可能性があるため、注意しましょう。
- 容姿・外見
- 表情・視線・姿勢
- 声の高さ・大きさ・速さ・テンポ
- 話す内容・言葉 など
候補者への連絡
日程連絡や結果の連絡といった場面でもハロー効果の影響を受ける可能性があります。
例えば、以下のような要素で影響を受ける可能性があります。
- 言葉遣い
- 声の高さ・大きさ・テンポ
- 会話のスムーズさ など
面接で起こりうるハロー効果の具体例
前述のとおり、採用面接はハロー効果の影響を色濃く受ける可能性があります。
採用面接で生じうるハロー効果には以下のようなものがあります。
- 学歴・役職・経歴
- 面接官と共通点がある
- 外見・容姿
- 候補者のスキルを拡大解釈してしまう
- 候補者の特定の要素を、その他の側面にも当てはめてしまう
それぞれ以下で詳しく解説します。
学歴・役職・経歴
学歴や経歴は採用評価に大きな影響をおよぼします。
以下のような例はハロー効果の影響だと考えられます。
- 〇〇会社に勤務していたのだから当社でも業績を上げてくれるだろう
- 有名大学出身だから優秀に違いない
- 営業職出身だからコミュニケーション能力が高いだろう
- 取得難易度の高い資格を取得しているから当社でも業績を上げてくれるだろう
- CxOだったからマネジメント能力が高いだろう
面接官と共通点がある
面接の場で面接官と共通点があるとわかったとき、候補者に親近感を感じたり、主観で判断してしまう恐れがあります。
例えば、以下のような例があります。
- 面接官と同じ大学出身だったため、意気投合し、コミュニケーションスキルが高いと評価された
- 失敗や短所を語る候補者に対して、面接官が自分の経験と照らし合わせてリスクを過大評価し、全体的に低く評価した
外見・容姿
候補者の外見や容姿から類推して全体評価をしてしまうのもハロー効果の影響と考えられます。例えば、以下のような例があります。
- スーツに埃がついていたので、おおざっぱでミスが多い人物と評価した
- 候補者の見た目が面接官の好みだったため、高評価を与えてしまった
- 表情が明るく元気なため、接客や営業に向いていると評価した
外見や容姿はそれを持って判断されるべきではありません。
なお、アメリカでは履歴書の顔写真すら不要で、年齢や性別も記載していません。
候補者のスキルを拡大解釈してしまう
候補者の特定のスキルを拡大解釈してしまうのもハロー効果と言えます。
例えば、以下のような例があります。
- 語学力が高いからグローバルな仕事が得意だろう
- 第一印象が良いから人間性も良いだろう
- 堂々とした立ち振る舞いだからコミュニケーション能力が高いだろう
候補者の特定の要素を、その他の側面にも当てはめてしまう
候補者の目立った特徴に引きずられてその他の評価が歪んでしまうのもハロー効果の影響と言えます。
例としては以下のようなものがあります。
- 明るくハキハキ受け答えをしたため、コミュニケーション能力が高く、ポジティブ思考の人材と評価してしまう
- 履歴書の字が汚いから仕事が雑な人材だと低評価をしてしまう
- 採用担当のSNSでの反応が良いため、自社に合った人材と評価してしまった
ハロー効果を回避する方法
ハロー効果などの評価エラーは人間の認知や深層心理によって起こるものです
ハロー効果を回避するには意識づくりだけでは限界があります。
採用プロセスを見直し、ハロー効果などの評価エラーが起きにくい仕組みづくりが必要です。
ハロー効果を回避する仕組みづくりのポイントは「誰が評価しても同じ結果が出ること」です。
具体的には以下のような方法があります。
- 採用基準を明確にする
- ブラインド採用を導入する
- 360°評価を導入する
- 項目単位で面接官を変える
- スキルテストを実施する
- バックグラウンドチェック・リファレンスチェックを行う
それぞれ下記で詳しく解説します。
採用基準を細かく定義する
まず、自社が求める人材の人物像を明確にし、採用基準を細かく定義することが重要です。
採用基準を明確に定義し、関係者間で共有できれば、ハロー効果の影響を受けにくくなります。
ブラインド採用を導入する
ブラインド採用もハロー効果の回避方法として有効です。
ブラインド採用は候補者の経歴や写真、性別などを伏せて評価を行う採用手法です。
ハロー効果が起きやすい項目を伏せるため、影響を抑えやすくなります。
360°評価を導入する
360°評価とは候補者の配属予定先の上司や部下、同僚など様々な立場の評価者で候補者を評価することです。
明確な評価基準を設けてもバイアスがかかってしまうのが人間です。
複数の多様な視点で評価することでハロー効果の影響を抑えることにつながります。
項目単位で面接官を変える
特定の項目における候補者の特徴が全体評価に影響をおよぼす恐れがあるのが、ハロー効果です。
そのため、評価項目ごとに面接官を変えればハロー効果の影響を回避しやすくなります。
また、ハロー効果だけでなく、中央化傾向や近隣誤差といったほかのバイアスも回避しやすくなります。
スキルテストを実施する
スキルテストとは、業務や職務遂行に必要な業務能力を評価する検査のことを言い、ジョブテスト、スキル診断と呼ばれることもあります。
採用のミスマッチを防止したり、採用担当者の負担を軽減する目的で導入するケースが多いです。
特に専門職や技術職の採用でスキルテストを実施すると、候補者の実力を客観的に把握することができます。
スキルテストには、プログラミングやデザインといった専門職向けのテストのほか、エクセルやパワーポイントなどのPCスキル、ビジネスマナーや国語、計算など様々な種類があります。
バックグラウンドチェック・リファレンスチェックを行う
バックグラウンドチェックとは、候補者が提出した資料や主張する経歴が正しいものかを確認する調査です。
候補者が主張するスキルや経歴が虚偽であれば、それだけでもミスマッチにつながってしまいます。
リファレンスチェックとは候補者の前職の上司や同僚に対して、候補者の勤務態度や人柄、実績についてヒアリングする調査です。
バックグラウンドチェックやリファレンスチェックを導入することで、多面的かつ客観的な評価ができるため、ハロー効果などの評価エラーを回避しやすくなります
まとめ
採用現場では人材を適切に見極める必要があります。
ハロー効果の影響を軽減し、適切に候補者を見極めるためには評価エラーを起こしにくい仕組みづくりが必要です。
バックグラウンドチェックやリファレンスチェックをプロセスに組み込むことで、面接官の主観を排除した客観的な情報を取得できます。
ハロー効果や評価エラーを防ぎ、適切に人材を見極めるためにも、多面的かつ客観的な評価プロセスを構築しましょう。