優秀な人ほど辞めていく理由は?見落としがちな前兆と離職防止対策
2026.03.17
「なぜ、あのエース社員が……」
期待していた若手や、現場の要である中堅社員が突然退職を願い出る。
この悩みは、多くの採用・人事担当者が直面する深刻な課題です。
優秀な人材の流出は、単なる戦力喪失に止まらず、残ったメンバーの士気低下や採用・育成コストの増大、連鎖退職など負のスパイラルを引き起こす恐れがあります。
しかし、多くの企業がそのサインを見落とし、気づいたときには手遅れになっているケースが後を絶ちません。
本記事では、優秀な人材が離職を選ぶ真の理由と、その予兆、そして明日から実践できる具体的な予防策を解説します。
優秀な人材ほどすぐに辞める理由
優秀な人材が辞めるのには、必ず理由があります。
「突然辞めた」と感じるかもしれませんが、その背景には積み重なった不満や違和感が存在します。
優秀な人材が辞める代表的な8つの理由を整理します
正当に評価されず、給与や待遇に不満があるから
優秀な人材が離職する理由のひとつに、正当に評価されないこと、そして給与や待遇への不満があります。
優秀な人材は自己評価が高く、自身の貢献に見合った報酬を強く求める傾向があります。
常に努力を重ね、結果を出しているにもかかわらず、成果が認められない、給与が上がらない…
成果が評価や報酬に反映されなければ不満を感じるのも当然です。
特に年功序列の給与体系であったり、評価基準がない・または不透明だったりすると場合は、不満はより強くなります。
成長する機会ややりがいを感じられないから
優秀な人は現状維持を嫌い、常に自己成長を求めています。
昇進の機会やスキルアップの機会がなく、将来の展望を見出せなくなると、自身のキャリアが停滞することに強い危機感を抱きます。
「この会社にいても、これ以上成長できない」と感じると、より挑戦できる環境を求めて外に目を向けるようになります。
また、仕事への順応が早いため、日常の業務に物足りなさを感じたり、「難易度が低い」と感じたりしやすい傾向があります。
単調な業務の繰り返しや新しい挑戦ができない、といった状況が続けば、優秀な人材のモチベーションを急速に低下させてしまいます。
会社の将来性に不安を感じるから
優秀な人は情報収集力が高く、会社の立ち位置や経営状況、競争力、将来性、業界全体の動向を敏感に察知します。
自社の将来性に不安があれば、「この船に乗っていては危ない」と判断し、沈む前に逃げる判断をくだします。
- 経営者のビジョンが明確でない
- 組織改革が繰り返されるだけで成果が出ない
- 業界全体の先行きが不透明
こうした状況では、特に市場価値の高い優秀な人材から離脱していきます。
優秀な人材に業務負担が偏っているから

優秀な人は能力が高く、信頼も厚いため、多くの業務が集まる傾向があります。
このような状況が続くと、優秀な人材が過重労働状態に陥りやすく、燃え尽き症候群(バーンアウト)やワークライフバランスの崩壊を引き起こし、心身の限界を迎えてしまいます。
その結果、より健全な労働環境を求めて離職してしまいます。
また、「頑張れば頑張るほど損をする」と感じさせる職場環境では、モチベーションが低下するため、優秀な人材ほど早期に見切りをつける原因になります
他社がより高い評価・待遇を示したから
労働市場は流動性が高まっており、ヘッドハンティングなどのスカウトや引き抜きが日常的に行われています。
優秀な人材は転職市場で高く評価される傾向があるため、ヘッドハンターや転職エージェントから今より良い条件のアプローチを受けやすい立場にあります。
自社に大きな不満がない場合でも、今より良い条件を提示されれば転職するケースもあります。
仕事の裁量権が少ないから
優秀な人ほど自立性が高く、自分のアイデアや判断で仕事を進めたいと考える傾向が強いです。
一方、実際には裁量権が限られているケースが多いのが実情です。
承認プロセスが多かったり、細かい指示が必要だったりする環境はストレスでしかありません。
自分の判断で仕事を進めたい、能力を思う存分発揮したいと考え、離職してしまうのです。
人間関係が良くないから
職場の人間関係の悪さは、優秀かそうでないかに関わらず離職の大きな要因になり得ます。
優秀な人材であれば「このような環境で我慢して働き続ける必要はない」とすぐに割り切り、行動に移すスピードが速い傾向があります。
特に、マイクロマネジメントやパワハラなど、上司のマネジメントスタイルへの不満は離職の直接的なきっかけになり得ます。
成功する自信があるから
高いスキルと実績を持つ優秀な人材の中には、「自分でやれる」という自信から起業・独立を志す人もいます。
このような場合、待遇改善などでは引き留めることが難しいのが実情です。
対策としては、優秀な人材の起業を組織として応援しつつ、その後も良好な関係を維持することが長期的な企業価値の向上につながることがあります。
優秀な人が辞めるとどのような影響があるのか

優秀な人材の退職は、一人の社員が去るだけの問題ではありません。
組織全体に連鎖する深刻な影響を理解しておくことが重要です。
具体的には以下のような影響をおよぼす恐れがあります。
- 採用コスト・育成項ストの増大
- 従業員の士気が下がる
- 業務の質や生産性が低下する
- 連鎖退職
それぞれについて下記で解説します。
採用コスト・育成コストの増大
優秀な人材の離職は採用コストや育成コストの増大を招く恐れがあります。
中途採用で人材紹介会社を利用した場合、紹介料の相場は年収の30〜35%程度が相場と言われています。
優秀な人材は年収が高い傾向があるため、それだけ紹介料は高額になります。
ほかにも、実際の採用では面接官の人件費や場所代などの工数もかかります。
さらに、その人材が即戦力として機能するまでの研修費や育成期間もコストになります。
教育研修費用について、株式会社産労総合研究所が2025年に上場企業および同社会員企業約3,000社を対象に実施した調査によると、従業員1人あたり36,036円という結果でした。
優秀な人材一人の退職によって生じる総コストは非常に大きいものになることがわかります。
参考≫≫
株式会社産労総合研究所「2025年度 教育研修費用の実態調査(https://www.sanro.co.jp/news/n117342.html)」※1
従業員の士気(モチベーション)が下がる
優秀な人材の離職は周囲のメンバーにとって強烈なメッセージになり、周囲の士気を下げるリスクがあります。
特に退職理由が企業への不満や不安であった場合、それが社内に広まることで、不満の連鎖が生まれやすくなります。
業務の質や生産性が低下する
優秀な人材が担っていた業務は、その人が抜けたることで品質が落ちたり、処理が滞ったりすることがあります。
特に属人化していた業務の場合、後任者が同等のパフォーマンスを発揮できるまでに長い時間がかかります。
顧客対応の悪化や遅延、商品・サービスの品質低下は取引先にも悪影響をおよぼす恐れもあります。
連鎖退職
「あの人でも辞めたのだから自分も転職を考えようか」
優秀な人材の退職をきっかけに、同じ価値観や不満を共有していた社員が次々と辞めていく連鎖退職は最悪のシナリオです。
ひとりの退職が5人、10人の退職に発展し、組織の根幹を揺るがすケースも珍しくありません。
たったひとり優秀な人材が退職するだけで、採用コスト増・士気低下・生産性低下・連鎖退職という複数の苦境が立て続けに起こり、組織に大ダメージを与える可能性があるのです。
優秀な人材がすぐに辞めてしまう職場の特徴

優秀な人材の離職が多い職場には共通した特徴があります。
自社に当てはまるものがないか、チェックしてみてください。
職場環境や労働条件に問題が多い
- 「長時間労働が常態化している」
- 「有給休暇が取りにくい雰囲気がある」
- 「ハラスメントへの対応が不十分」
こうした環境は優秀な人材を急速に消耗させるため、「この職場で働き続けるのは難しい」と感じやすくなります。
また、労働条件に問題がある職場は採用段階でも選ばれにくいため、優秀な人材が辞めるだけでなく、優秀な人材が集まらないという悪循環に陥りやすくなります。
評価制度が整備されていない
- 評価基準が不明確
- 上司の主観で評価が決まる
- 成果が給与に反映されない
上記のように透明性が低く、公正感のない評価制度は従業員の不満につながります。
特に優秀な人材は自分の成果が正当に評価されているかどうかを重要視します。
そのため、評価制度が整備されていない状況では、高いパフォーマンスを発揮している人材であるほど不満を抱きやすくなります。
「頑張っても評価が変わらない」という感覚が蔓延すると、優秀な人材から順に見切りをつけていくでしょう。
従業員が自分の役割を果たしていない
優秀な人材は組織に所属する従業員が自分の役割を果たしていない状況を嫌います。
- 業務をサボる人がいる
- 責任を回避する人がいる
優秀な人材はこのような状況を敏感に察知し、「自分だけが頑張っている」という不公平感を抱きます。
なかでも、上司や管理職が自分の役割を果たしていないという場合はストレスを強く感じます。
このような機能不全の組織に身を置き続けても正当に評価されないばかりか、身を削る一方だと考え、去っていくのです。
管理職の能力不足
管理職にとって部下を適切に指導し、成長させることは重要な役割のひとつです。
しかし、「上司が無能」「マネジメントができていない」という状況では、部下は適切な指導を受けられず、成長することもかないません。
優秀な人材は常に成長を求めるため、「こんな上司の下では働けない」と考え、去っていきます。
特に感情的な指導やマイクロマネジメントは優秀な人材にとって大きなストレスになり得るため、離職を加速させる恐れがあります。
経営不振に陥っている
- 業績の悪化
- 資金繰りの問題
- 事業の縮小
こうした情報は社内でいち早く広まります。
優秀な人材は将来を見据えて行動するため、経営不振のシグナルを早期に察知して転職などの行動を始めます。
優秀な人材が辞める前兆

退職の意思は、ある日突然固まるものではありません。
多くの場合、事前に何らかのサインが現れています。
優秀な人材が辞める際に見られる4つの前兆を紹介します。
仕事に対する積極的な姿勢がなくなる
優秀な人材は基本的にポジティブな言動が多いものです。
以下のような言動が見られたら注意が必要です。
- これまで会議で積極的に発言していたのに口数が減った
- 仕事への積極的な姿勢がなくなった
- 仕事への意欲が低下したように感じる
- 業務を他人に任せるようになった
- 「無理だと思う」などのネガティブな言動が増えた
こうした変化は、「どうせやっても意味がない」「言っても変わらない」と諦めたり、心が離れたりして、仕事への熱量が失われているサインです。
「最近様子がおかしい」と感じたら、放置せずに1on1などで話を聞く機会を設けることが重要です。
コミュニケーションを避けるようになった
真剣に離職を考え始めると、周りの人とのコミュニケーションを避けるようになります。
- 上司や同僚との雑談が減る
- ランチを一人で取るようになる
- チャットの返信が遅くなる
孤立した行動をとることは、職場への帰属意識が低下しているサインです。
特に、それまで活発にコミュニケーションをとっていた人物に変化が見られた場合は要注意です。
有給休暇の取得が増えた
優秀な人材は基本的には転職先を決めてから退職することが多いです。
そのため、離職前に転職活動などで有給休暇を取得するケースは非常に多く見られます。
特にこれまでほとんど有給を使わなかった人物が急に取得頻度を上げた場合、転職活動を始めたサインである可能性があります。
体調不良による欠勤が増えた場合も実際は転職活動の面接のためである可能性があります。
身の回りを整理し始めた
- デスクの私物を少しずつ持ち帰る
- 社内資料や引き継ぎに必要な情報を整理している
こうした行動は、退職を具体的に考え始めているサインです。
この段階では既に転職先が決まっているケースも多く、早期に察知することが引き留めの鍵になります。
優秀な人材を辞めさせないための予防策

離職防止は「退職の申し出を受けてから」では遅い場合がほとんどです。
平時からの継続的な取り組みが、優秀な人材の定着率を高めます。
公平で納得性の高い評価制度を構築する
優秀な人ほど自分の成果に対する正当な評価を求めます。
そのためには、評価基準を明文化し、誰が見ても納得できる仕組みを構築します。
また、以下のような評価サイクルを仕組化し、評価結果とその理由を本人に丁寧に説明することも重要です。
- 目標設定
- 評価
- フィードバック
- 報酬へ反映
評価への納得感が、優秀な人材の定着につながることを理解しておきましょう。
給与・待遇の定期的な見直し
従業員の成果を正当に評価するだけでなく、それを給与や待遇に結びつけることは重要です。
インセンティブを設ける、ボーナスを支給する、昇進するなど、努力や成果が報酬に結びつくことで、従業員のやる気を引き出しやすくなり、離職防止につながります。
また、市場相場や業界水準を調査し、自社の猶予水準が低いようであれば、定期的に見直すことも重要です。
1on1ミーティングで従業員の声を聞く
従業員の声を直接聞くことは非常に重要です。
具体的には定期的に1on1ミーティングを実施し、従業員のニーズや悩みを聞く仕組みを構築します。
このとき重要なポイントは以下の2点です。
- 聞き役に徹すること
- 業務の進捗確認だけでなく、業務や職場環境への不満や要望、キャリアビジョンなどについても話せる場を提供すること
部下が本音を話せる環境や関係性を育てることは離職の早期察知につながります。
また、自分の意見が取り上げられ、改善につながれば、従業員の心理的安全性も高まります。
裁量権と業務量の適切な配分
優秀な人材は自分の能力を最大限に発揮できる労働環境を求めます。
そのため、人材に適した仕事と十分な裁量権を与えることが重要です。
一方で、優秀な人材に業務が集中しすぎないよう、定期的に業務量の棚卸しを行い、チーム全体で適切に配分することも重要です。
こうすることで、優秀な人材が自分能力を発揮しやすくなり、満足度が向上しやすくなります。
会社のビジョンや方向性を明確に示す
会社のビジョンや方向性を明確に示すことは、従業員の共感を生み、モチベーション向上につながりやすくなります。
このとき、経営者・管理職が継続的かつ熱意を持って伝えることが重要です。
これにより、「この会社はどこを目指しているのか」「自分はその未来にどう貢献できるのか」を理解しやすくなり、エンゲージメント向上につながります。
キャリアパスの提示と成長機会の提供
優秀な人材の成長意欲に応えるため、キャリアパスを共に描き、成長機会を提供することも大切です。
具体的な施策として以下のようなものがあります。
- 社内公募制度
- ジョブローテーション
- 社内研修
- 定期的なキャリア面談
- 外部研修への参加支援
- 資格取得補助
- 副業の許可 など
成長の機会を積極的に用意することで、「この会社にいれば成長できる」という実感を与えることができ、優秀な人材の定着につながります。
ワークライフバランスの整備

ワークライフバランスを整備し、多様なライフスタイルに対応できる働き方を整備することも大切です。
フレックスタイム制やリモートワーク、育児・介護休暇の取りやすい環境を整備すれば、従業員は個別の事情に合わせて働くことができます。
また、育児や介護など家庭環境の変化をきっかけに転職を考える優秀な人材を引き留め、パフォーマンスを高める効果が期待できます。
管理職へのマネジメント・コーチング教育
離職の要因のひとつに管理職のマネジメント能力不足があります。
しかし、日本では、入社して仕事を覚えたら、マネジメントについて特段学ぶことなく管理職になるケースが多いのが実情です。
すでに教育を受けている場合であっても、時代とともに必要なマネジメントスキルは変わります。
そのため、コーチング・フィードバックスキル、1on1の実施方法など、管理職への継続的な教育や研修内容のアップデートを行いましょう。
マネジメントの質が向上することで、人材の定着率改善につながります。
適材適所の人材配置と業務の脱属人化
従業員の強みや志向性に合った業務を担当させることは従業員が実力を発揮しやすくなるだけでなく、モチベーションの維持につながります。
適材適所の人材配置を行い、配属のミスマッチを防ぎましょう。
また、特定の人材に業務が集中したり、属人化したりしている状況は、その人が辞めたときのリスクを高めるだけでなく、当事者の負担を増大させ離職を促進します。
業務の標準化やマニュアル化、チーム内の知識共有を進めましょう。
組織の健康状態を継続的にモニタリングする仕組みの構築
定期的な1on1の実施のほか、パルスサーベイやeNPSによって、従業員や組織の健康状態を継続的にモニタリングする仕組みを構築するのもおすすめです。
パルスサーベイは短い質問・短頻度で定期的に実施するアンケートで、従業員の不満やストレスをこまめに確認するものです。
eNPS(Employee Net Promoter Score)は従業員が家族や友人に職場をどのくらい推奨したいかを数値化したものです。
従業員や組織の状況を定期的に把握することで、従業員の離職の兆候を早期に察知できるため、手遅れになる前に手を打つことができます。
退職者インタビュー・アンケートの実施
退職する社員の意見を聞くことは離職の真の理由だけでなく、組織の課題や弱みを把握するための貴重な機会です。
ただし、退職するからといって本音を話してくれるかどうかはわかりません。
そのため、上司や人事ではなく、退職者が心置きなく会話をする同僚や第三者によるヒアリングが有効である可能性があります。
第三者によるヒアリングにはエグジットサーベイ(アンケート)とエグジットインタビュー(面談)の二つの方法があります。
前者は紙やオンラインで設問に答えるもので、回答が得られやすい一方、定型的な内容になりやすく、理由の深掘りができないことがデメリットです。
後者は電話やオンラインなどヒアリングするもので、手間や時間がかかりますが、退職理由を深掘りできる可能性があります。
いずれの場合も、退職者が本音を語るとは限らないため、退職者が多い場合は匿名のアンケートを行うのも有効です。
ここで得られた内容については真摯に受け止め、組織改善に活かしていきましょう。
採用段階でミスマッチを防ぐことが離職防止の根本策

離職防止は入社後の取り組みに集中しがちです。
しかし、採用段階でのミスマッチを防ぐことこそが、最も根本的かつ効果的な離職防止策といえます。
採用ミスマッチが離職につながるメカニズム
採用面接では、候補者は自分を良く見せようとします。
一方、企業側も自社の魅力を候補者にアピールしようとします。
そのため、入社後に双方が「思っていたのと違う」という状況に陥るケースがあります。
例えば、以下のようなミスマッチがあると早期離職につながる恐れがあります。
- 職務経歴・スキルの誇張や虚偽記載(実際には担当していないもしくはチームの一員だっただけ)
- 学歴・資格の詐称(採用条件を満たすために経歴を改ざんしていた)
- 前職での離職理由の虚偽(ハラスメントや横領など問題行動があったことを隠していた)
- 志向性・価値観(社風に合わせるために繕った人物像を示していた)
- 前職での評判・実績と面接での自己申告に乖離がある
これらは選考段階ではわかりづらく、実際に働いてから判明したり、早期離職に至ることで現れたりすることが多いです。
こうなってしまうと、採用・育成にかけたコストが無駄になるだけでなく、職場全体の士気を下げるなど悪影響をおよぼす恐れがあります。
経歴・前職情報の確認が重要な理由
令和7年に公表された年厚生労働省の調査によると、令和4年3月に卒業した新卒者の入社3年以内の離職率は大学新卒採用で33.8%という結果でした。
また、2024年のHRproの調査によると、若手人材の離職要因は従業員数1,001名以上の大企業では「業務内容のミスマッチ」が最多で38%、次いで「待遇」「上司との人間関係」、中小企業では「上司との人間関係」が最多で34%、次いで「待遇」「業務内容のミスマッチ」となっています。
事業規模を問わず、「業務内容のミスマッチ」「待遇」「上司との人間関係」が離職理由の大半を占めることがわかります。
特に業務内容や待遇については、採用段階で相互理解が十分に深まっていないことによる部分があります。
逆にいえば、採用段階で十分に相互理解を深めることができれば、早期離職を予防できる可能性が高くなるということです。
これには、企業側が自社の良い部分だけでなく、悪い部分も含めてありのままの情報を求職者に開示することが重要です。
同時に候補者が自社にどのようなイメージを抱いているのか、候補者の経歴やスキルが自社に適したものかを正確に判断することも重要です。
そのため、書類や面接だけでは把握できない情報(実際の業務実績、前職での問題行動、職場での評判など)を採用段階で確認することがミスマッチ防止に有効な手段となります。
参考≫≫
新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)を公表しますhttps://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00010.html ※2
HRpro「HR総研:「若手社員の離職防止とオンボーディング」に関するアンケート 結果報告
https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=395 ※3
バックグラウンドチェック導入がミスマッチ防止に効果的な理由
採用段階のミスマッチを防ぐには、バックグラウンドチェックやリファレンスチェックの導入が効果的です。
バックグラウンドチェックとは、採用候補者の提出書類や面接での申告内容を第三者機関が客観的に確認・調査するサービスです。
一方、リファレンスチェックは前職の上司・同僚等に候補者の業務実績や人物評価、離職理由などを確認するサービスです。
バックグラウンドチェック・リファレンスチェックを採用プロセスに組み込むことで、以下のような効果が期待できます。
- 経歴・資格の虚偽申告者を採用前に排除できる
- 面接では見えにくい人物像・業務実績を把握してミスマッチを防止する
- ハラスメントや横領など前職での問題行動がある人材の入社を防ぎ、職場環境を守る
- 採用の質が向上することで、入社後の早期離職率低下につながる
- 採用ミスマッチによる再採用・再育成コストを削減できる
バックグラウンドチェックを適切に導入することで、優秀かつ誠実な人材を採用する確度が高まります。
特に企業リスクの観点から管理職・専門職・財務・個人情報を扱うポジションへの採用では、バックグラウンドチェック・リファレンスチェックの実施を強くおすすめします。
バックグラウンドチェックの詳しい説明や導入時の注意点については、以下の記事を参考にしてください。
参考≫≫
バックグラウンドチェックとは?調査内容と流れ、注意点を解説
優秀な人材から退職の申し出があったときの対応

優秀な人材から退職の申し出があったとき、感情的な引き留めや無関心な対応をすると逆効果になる恐れがあります。
適切な対応をご紹介します。
まず、丁寧に話を聞く
退職の申し出を受けたら、まず冷静になり、「なぜ辞めたいのか」「どのような不満や希望があり、どう改善されれば考え直せるか」につい丁寧に聞き出します。
このとき、責めたり、引き留めを急いだりせず、本人の気持ちを尊重した対話を心がけましょう。
改善可能な理由であれば誠実に向き合う
退職理由が「給与への不満」「業務量の偏り」「キャリアの閉塞感」など、会社側の対応で改善できる内容であれば、具体的な改善策を提示します。
これにより引き留め効果が高まります。
ただし、提示する改善策は実現可能なものである必要があります。
口先だけの改善策では信頼を失ってしまい、結果的に離職につながる恐れがあります。
改善策については経営層や関係部署と慎重に協議し、現実的で従業員に期待を持たせる効果の高い内容を提示しましょう。
意思が固い場合は円満退職を最優先に
引き留めが難しい場合は、無理に引き止めるのではなく、円満退職を最優先に考えましょう。
自社で働いたことを退職者が前向きに捉えることは、残ったメンバーにも良い影響をもたらします。
また、退職後も元社員と良好な関係を築きやすくなり、企業の評判や今後の採用にプラスの効果が得られやすくなります。
一方、退職者と喧嘩別れしてしまうと、企業の評判が低下したり、今後の採用活動にも悪影響をおよぼしたりする恐れがあります。
優秀な人材の退職が決まったあとの対処法

優秀な人材の退職が決まったら、組織として適切な対応をとることが重要です。
引き継ぎの徹底
退職日までの間に退職者が携わっていた業務内容・取引先情報・進行中のプロジェクト状況などを可能な限り引き継ぎます。
退職者にはマニュアルや引き継ぎ書の作成を依頼し、情報が組織に残るよう工夫しましょう。
残されたメンバーへのフォロー
優秀な人材が辞めると、残ったメンバーに「なぜあの人が辞めたのか」という不安や不満が広がり、連鎖退職につながる恐れがあります。
上司や人事が残された従業員と積極的にコミュニケーションをとり、組織の方向性や今後の対応を誠実に説明することが重要です。
業務の再分配と過負荷の防止
退職者が携わっていた業務を残ったメンバーに適切に分配し直します。
ただし、過負荷になることは次の離職を招くリスクがあります。
そのため、特定の人物に業務が集中しないよう注意が必要です。
再配分する際は必要に応じて業務フローの見直しや、派遣・業務委託などの外部リソースの活用も検討しましょう。
採用・育成計画の見直し
優秀な人材の退職を機に、改めて採用計画・育成計画を見直すことも大切です。
同じような人材をただ補充するだけでは、同じことが繰り返される恐れがあります。
「どのようなスキル・人物像が必要か」を改めて整理したうえで採用活動を再開しましょう。
同時に、採用手法やバックグラウンドチェックの導入の可否についても検討することも有効です。
まとめ
優秀な人材が辞めていく背景には、評価や成長機会、職場環境、人間関係など、さまざまな要因が複合的に絡み合っています。
重要なのは「辞めてから手を打つ」のではなく、「辞めたいと思わせない組織」を日頃から築くことです。
ここでご紹介した内容を参考に、自社の評価制度や労働環境を見直し、優秀な人材が離れない仕組みづくりを構築しましょう。
採用段階でバックグラウンドチェックやリファレンスチェックを行うことで、採用精度を高め、長く活躍できる人材の採用につながります。ぜひご検討ください。
※1 株式会社産労総合研究所「2025年度 教育研修費用の実態調査」
※2 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)を公表します」
※3 HRpro「HR総研:「若手社員の離職防止とオンボーディング」に関するアンケート 結果報告」
