集団凝集性とは?高める重要性と最大化するための方法を解説
2025.06.13

集団凝集性とは組織に所属するメンバーを惹きつけ、集団の一員として留まらせるようにする動機づけのことを言います。
集団凝集性が高い組織は生産性が高く、心理的安全性や定着率も高い傾向があります。
この記事を最後まで読むことで以下のことがわかります。
- 集団凝集性が注目される背景と重要性
- 集団凝集性の高い組織の共通点
- 集団凝集性を高めるメリット・デメリット
- 集団凝集性を高める方法
集団凝集性とは
集団凝集性とは、組織に所属するメンバーを惹きつけ、集団の一員となるように動機づける心理的な力のことを言います。
経営学用語や社会心理学用語のひとつで、英語では「Group Cohesiveness」となります。
具体的な例としては、「その集団に属することで何らかの地位や名誉が得られる」といったものが挙げられます。
集団凝集性が注目される背景
少子高齢化が進行するなか、労働力の確保は重要な課題です。
このような状況のなか、企業が自社のパフォーマンスを高める目的で、少ない労働力で組織の力を最大限に引き出す方法に注目が集まるようになりました。
さらに、近年の情報技術の進化や働き方の多様化により、同じ組織に異なるバックグラウンドを持つ人材が集まることも増えています。
このような背景から、これまで以上に組織の結束力や一体感を重視するようになり、集団凝集性が重要視されるようになりました。
集団凝集性の種類
集団凝集性は大きく次の2つの種類にわかれます。
- 対人凝集性:組織のメンバー同士が互いに好意的なつながりを持つことで生じるもの。組織内で認められているという満足感から帰属意識が高まっている状態。
- 課題達成凝集性:組織に属することで個人の権利や特典、自己実現が可能な状態であることで生じるもの。集団への貢献意識や役割へのモチベーションが高まっている状態。
2つのうちどちらが重要ということではなく、それぞれの意味を理解し、両方のバランスを見て高めることが大切です。
スポーツにおける集団凝集性の意味
スポーツにおける集団凝集性はチームの結束力や一体感、目標達成のために個々のメンバーがどれだけ行動できるかという度合を指します。
集団凝集性の高いチームはメンバーのチームに対する愛着が強いため、より高いチームワークを発揮できます。
集団凝集性の高い組織の共通点

集団凝集性の高い組織には以下のような共通点・特徴があります。
- 集団の規模が小さい
- 共有する時間が長い
- 成功体験の共有
- ライバル組織が存在している
それぞれについて下記で解説します。
集団の規模が小さい
集団凝集性は集団を構成する人数が少ないほど高まる傾向があります。
規模が小さい集団はその分メンバー同士が親交を深めやすく、コミュニケーションも活発化しやすくなります。
一方、集団の規模が大きいとメンバー同士のコミュニケ―ションが希薄になりやすく、集団凝集性を高めにくいと言われています。
共有する時間が長い
集団凝集性は共有した時間の長さに比例して高くなると言われています。
長い時間を一緒に過ごし、親交を深めることで集団凝集性を高めることができます。
新入社員の場合は集団での研修を行うと、集団凝集性やエンゲージメントの向上に有効とされています。
成功体験の共有
共通の成功体験を持つメンバーは互いを認め合い、チームワークが向上しやすくなります。
成功体験を積む過程では、同じ目標や課題解決に向けて互いに協力し、目標を達成した喜びを共有することになります。
成功体験を共有することで、個々のメンバーに自信が生まれ、相互理解や信頼関係が深まり、チームの結束力強化につながります。
ライバル組織が存在している
組織にとってのライバルが存在しているというのもポイントです。
「力を合わせてライバルに打ち勝とう」という気持ちが生まれれば、結束力が強まり、集団凝集性が高まります。
集団凝集性を高めるメリット
集団凝集性を高めることで得られるメリットには以下のようなものがあります。
- 生産性向上につながる
- 心理的安全性が高まる
- 帰属意識が高まる
- 離職率が低下する
それぞれについて、下記で解説します。
生産性向上につながる
集団凝集性が高い組織はメンバーの相互理解が深く、結束力や団結力が高まっています。
そのため、目標に向かってメンバー同士が連携し、高いパフォーマンスを発揮しやすくなります。
集団凝集性が高いチームが複数集まれば、組織全体の生産性向上にもつながります。
心理的安全性が高まる
心理的安全性とは、個々のメンバーが自由に意見やアイデアを発信できる環境のことを言います。
心理的安全性が高い集団では、失敗を恐れず新しいことにチャレンジしたり、わからないことを聞いたり、相談したりすることがしやすくなります。
帰属意識が高まる
集団凝集性が高い組織では、心理的安全性が高く、所属する集団内で働くストレスも少ないため、仕事へのモチベーションや帰属意識が高まります。
帰属意識が高まれば、組織に対する信頼感や安心感が生まれ、生産性向上につながります。
離職率が低下する
集団凝集性が高い組織ではメンバー同士の信頼関係が築かれています。
人間関係で嫌な思いをすることなく、居心地が良い状態が続くため、チームに対する愛着が高くなり、自ずと離職率が低下します。
集団凝集性を高めることによるデメリット

集団凝集性を高める際は以下のようなデメリットについても把握しておきましょう。
- 同調圧力が生まれる可能性がある
- 集団浅慮(グループシンク)に陥る恐れがある
- 馴れ合いが生じる恐れがある
- 内集団ひいき(内集団バイアス)が生じる恐れがある
それぞれ、下記で解説します。
同調圧力が生まれる可能性がある
同調圧力とは、集団内の少数意見を持つメンバーに対し、多数意見に合わせるように暗黙のうちに強制することを言います。
同調圧力が生じると多数派の意見に従い、合意にいたろうとするプレッシャーが働きます。
こうなると、本当は反対意見や違ったアイデアを持っていたにも関わらず、「話が振り出しに戻ってしまう」「議論が進まなくなる」「嫌われるかもしれない」などと考え、自由な意見を言えなくなってしまいます。
結果的に会議の形骸化や多角的な視点の欠如が起こり、集団での判断を誤る恐れがあります。
集団浅慮(グループシンク)に陥る恐れがある
集団浅慮(しゅうだんせんりょ)またはグループシンクとは、集団が持つ圧力により、議題に対する判断力が損なわれたり、好ましくない結論を出してしまうことを言います。
特に外部との関わりが少ない組織や支配的なリーダーが存在する場合に起こりやすくなります。
集団浅慮やグループシンクは前述の同調圧力によって生じることが多いです。
集団浅慮が生じると、個人の意見や多様性が認められない風土となり、柔軟性や独創性に乏しくなり、イノベーションが起きにくく、企業の成長を妨げることにつながります。
馴れ合いが生じる恐れがある
馴れ合いが生じやすいというのも集団凝集性を高めるデメリットのひとつです。
特に集団の規範意識が低いまま集団凝集性を高めてしまうと、ただ仲が良いだけの馴れ合い状態に陥る恐れがあります。
具体的には、上司との距離が近すぎてしまい、指示に従わなかったり、ルールを守らないといったことがあります。
こうなると、作業効率が悪くなったり、重大なミスを見逃したりする恐れがあります。
集団凝集性を高めるつもりが、集団の在り方に不満が生まれ、定着率の低下につながる恐れもあります。
内集団ひいき(内集団バイアス)が生じる恐れがある
集団凝集性を高めることで内集団ひいきや内集団バイアスが生じる恐れがあります。
内集団ひいきとは自分が所属する集団(内集団)のメンバーを、その他のメンバーより優れていると認知し、高く評価したり、優遇したりする現象を言います。
また、内集団バイアスは自分が所属する手段を外集団より優遇する心理的な傾向を言います。
組織への愛着が強くなることで、メンバーは組織に貢献しようという意識が強くなります。
この意識が間違った方向へ進むと、如何に他の組織より自分たちの組織が優位に立てるかを重視するようになることがあります。
集団凝集性を高めることで帰属意識が高まり、組織内のメンバーを好意的に感じることで、あたかも自分たちの評価が高まったと思い込んでしまうのです。
自分たち以外の組織の足を引っ張ろうとしたり、けなしたりすることも内集団ひいきの例と言えます。
具体的な例には以下のようなものがあります。
- 他の組織と共有すべき情報を独占する
- 組織に馴染めていないメンバーを避ける
- 「あの部署よりうちの部署のほうが貢献できている」などと言う
- 経営者が昔面倒を見た部下のチームを高く評価する
- 「最近の若いものは」「〇〇(職種・業種)は楽だ」などの発言
- 「子育てしてないから」「結婚してないから」など子供の有無や結婚の有無で差別する など
集団凝集性を高める方法

集団凝集性を高める方法には以下のようなものがあります。
- チームの規模を小さくする
- メンバー同士の共有時間を増やす
- ストレッチゴールを設定してチームでの成功体験を重ねる
- 組織への参加の条件を設定する
- バックグラウンドチェックやリファレンスチェックを活用する
それぞれ、下記で解説します。
チームの規模を小さくする
冒頭で述べたとおり、集団凝集性はチームの規模が小さいほど高まりやすくなります。
プロジェクトの内容や大きさにもよりますが、できるだけ厳選した人数に留め、小さく始めることが重要です。
組織全体の集団凝集性を高める際も、小規模の集団を複数作ることが重要です。
グループワークや研修を行う際も、4~5人程度のグループにわけると効果的です。
メンバー同士の共有時間を増やす
集団凝集性はメンバー同士が共有する時間の長さと相関があります。
しかし、ただ漠然と働くだけでは集団凝集性を高めるのは難しいと言えます。
そのため、メンバー同士が同じ時間を共有できる機会を意識的に多く設けることが重要です。
具体的には以下のような施策があります。
- 定期的なミーティング
- グループワーク
- プロジェクトチームの発足
- 入社前の交流会・内定式
- 入社後の新人研修
- オンボーディング など
また業務外でのコミュニケーションも貴重な共有時間です。
定期的に食事会を開いたり、会社側がランチ会の補助を出したりするというのも良いでしょう。
ストレッチゴールを設定してチームでの成功体験を重ねる
ストレッチゴールとは、達成不可能ではないが、努力すれば達成できそうな目標のことを言います。
集団凝集性を高めるためには、適度な努力と達成感が必要です。
現状のままでは達成が難しい目標(ストレッチゴール)を設定することで、目標達成時の達成感や成功体験を重ねることが重要です。
目標達成に向けて取り組む際は、メンバーが一致団結し、信頼関係を築くことが必要になります。
ストレッチゴールを設定して成功体験を重ねれば、メンバー同士の信頼関係が高まり、集団凝集性を高めることが期待できます。
組織への参加の条件を設定する

組織への参加の難易度が高いほど、集団凝集性が高まりやすいと言われています。
人は苦労して得た地位や立場を簡単に手放したくないという意識が働きます。
参加の難易度が高いと、参加できたことに誇りを感じやすく、帰属意識が高まります。
参加への難易度が高い集団に属すれば、集団への愛着が生まれ、集団凝集性が高まりやすくなります。
また、集団のなかに似たタイプの人がいると集団凝集性が高まりやすいとも言われています。
集団凝集性を高めるためには、集団への参加の難易度だけでなく、できるだけ似たタイプの人が集まるように配慮することも重要です。
バックグラウンドチェックやリファレンスチェックを活用する
集団凝集性を高めるためには、個々のメンバーの特性や価値観を考慮しながらチームを配置することも重要です。
在職期間が長い人材の場合、メンバーの特性や価値観はある程度把握できるかもしれません。
一方、新入社員や若手社員の場合は人材情報が少ないため、メンバーの情報を正確に把握することができません。
ほとんどの場合、応募時の書類や面接でのやり取りからメンバーの特性や価値観をある程度推測して配置するケースが多いでしょう。
しかし、新入社員・若手社員が応募時に虚偽の情報を申告していれば、適切なチーム配置ができません。
集団凝集性を高めるどころか、組織の和が乱れ、生産性を低下させる恐れもあります。
若手社員や新入社員の集団凝集性を高める際は、採用前にバックグラウンドチェックを行い、応募者の経歴や主張に虚偽がないかを確認することをおすすめします。
中途入社の場合はリファレンスチェックも併用し、前職での勤務態度や実績について確認しておくと良いでしょう。
まとめ
集団凝集性を高めると生産性や帰属意識の向上など様々な効果が期待できます。
ただし、やり方を間違えると同調圧力が起きたり、内集団ひいきや馴れ合いが生じるリスクもあります。
集団凝集性を高める際はルールを定め、異なる意見や批判も受け入れる姿勢を持ち、組織が健全に維持できるように努めることが重要です。
チームを編成する際はメンバー一人ひとりの特性や能力などを考慮し、バランスを見ることも重要です。
そのためには、従業員の特性や能力を正しく把握することが大切です。
若手社員や新入社員の場合は事前にバックグラウンドチェックやリファレンスチェックを行い、スキルや特性を正しく評価しておけば、適切なチーム作りができ、集団凝集性が高まりやすくなるでしょう。
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