リベンジ退職とは?原因・対策・採用段階での予防まで徹底解説
2026.03.31
近年、「リベンジ退職」という言葉が人事・採用担当者の間で注目されています。
リベンジ退職は単なる退職にとどまらず、企業に対して意図的なダメージを与える行動を伴うため、情報漏洩や風評被害、連鎖退職など、組織に深刻な影響をもたらします。
本記事では、リベンジ退職の定義・原因・対策を体系的に整理し、採用段階からの予防アプローチまでを解説します。
リベンジ退職とは
リベンジ退職とは、従業員が退職する際、会社や上司・同僚に対する報復(リベンジ)行動を取って辞めることをいいます。
単に退職するのとは異なり、組織に意図的なダメージを与えることを狙った言動を伴っているのが特徴です。
リベンジ退職は英語で「revenge quitting」 とも呼ばれ、労働市場の流動化やSNSでの発信などにより、一気に注目を集めるようになりました。
リベンジ退職が注目されるようになった背景には従業員エンゲージメントの低下や職場環境の悪化があるとされています。
日本でも若年層・ミドル層を中心に事例が増えており、人事部門にとって無視できないリスクとなっています。
一般的な退職は仕事が合わないことや報酬・人間関係への不満、体調不良といった動機が多いものです。
一方、リベンジ退職は退職を通じて会社(または特定の人物)に仕返しをしようとするのが特徴です。
リベンジ退職の具体例
リベンジ退職の代表的な例を以下に示します。
引継ぎの拒否・形骸化
ひとつめが退職前の引継ぎを意図的に行わない、または不十分なケースです。
マニュアル作成を拒否する、資料を残さないといった行動が見られます。
これにより後任が業務を把握できず、業務が滞留したり、職場に混乱をもたらしたりするリスクがあります。
SNS・口コミサイトへの悪評投稿・内情暴露
二つ目が転職・就職口コミサイトやSNSに職場の内情や問題点を暴露したり、誇張・歪曲したりして書き込むケースです。
これにより、企業イメージの低下や既存従業員の離職、採用活動への悪影響を誘発するリスクがあります。
最近は就職活動前に求職者が従業員の口コミやSNSでの発信を参考にすることが増えました。
特にSNSへの投稿が拡散されると影響はより甚大なものになります。
繁忙期を狙った突然の退職
決算期や繁忙期、大型プロジェクトの直前に突然退職を申し出るのも典型的なパターンです。
この時期は引継ぎに割ける時間が少なく、組織に与ええるダメージが最も大きいタイミングです。
退職者は敢えてダメージが大きいタイミングを狙って退職を申し出ている可能性があります。
データの故意削除・業務妨害
従業員が自分の担当業務のデータやファイルを退職前に意図的に削除・改ざんする行為もリベンジ退職の典型です。
従業員は刑事・民事上の責任が問われる恐れがありますが、企業側の管理責任も問われる恐れがあります。
削除や改ざんの事実に気づかれないうちに退職し、後になって組織が混乱するケースもあります。
顧客情報・業務データの無断持ち出し

顧客リストや業務上の機密情報を退職者が私的に持ち出すケースもあります。
この場合、情報を持ち出した従業員は不正競争防止法違反等の罪に問われる恐れがあります。
一方、情報を持ち出した元従業員が競合他社へ転職すれば、企業にとって競争力を脅かされ事態に陥る恐れがあります。
競合他社への転職と顧客・同僚の引き抜き
退職者が競合企業へ転職し、在職中に培った人脈を活用して元同僚や顧客を引き抜くケースがあります。
特に営業職や技術職で起きる傾向があり、同一職場から複数名が同じ競合他社に同時に転職するケースも見られます。
残存従業員への悪口の吹聴
退職前に従業員が職場内で経営陣や上司の悪口を流布し、周囲のモチベーションを意図的に低下させてから退職するというのも典型的なパターンです。
特に退職者と関係性が近い従業員が影響を受けやすく、連鎖退職につながる恐れがあります。
リベンジ退職に至る背景
リベンジ退職に至る主な背景・要因を整理します。
労働環境・就業条件とのギャップ
リベンジ退職に至る背景・要因のひとつに労働環境や就業条件とのギャップがあります。
入社前に期待していた働き方や待遇と、実際の職場環境に大きなギャップがあると、フラストレーションが蓄積します。
特に採用時の説明と実態が乖離していると、「騙された」「嘘をつかれた」という感情が強まり、リベンジ退職にいたることがあります。
ハラスメント・人間関係の問題
上司や同僚からのパワハラやセクハラ、いじめなどを受けていた場合、退職してもなお「やり返したい」という感情が残ることがあります。
特に、ハラスメントを訴えたにも関わらず、組織が適切に対処しなかった場合、さらに不満が募り、矛先が個人だけでなく、組織に向けられることもあります。
評価・処遇の不公平感
「成果が評価されない」
「同僚と比べて不当に低い評価を受けている」
このような感覚は強い不満が生まれやすくなります。
特に昇給や昇格の基準が不透明な場合は不満が強くなる傾向があります。
風通しの悪い組織文化
「風通しが悪く意見を言いにくい」
「トップダウンですべてが決まる」
このような職場環境では、不満や悩みがあっても誰にも相談できず、組織のなかで解消することが難しいでしょう。
このような状況が続けば、悩みを抱えた従業員が孤立感を覚えたり、存在意義を見出せなかったりしてしまい、組織への不満が増大します。
不満が蓄積した結果、リベンジ退職という形で発散しようとすることがあるのです。
キャリア形成・成長機会の欠如
「ここにいても成長できない」
「チャレンジする機会を与えてもらえない」
このような将来への不安や不満は離職の動機になり得ます。
不満が募った結果、「労働力が搾取された」という感情に変化し、報復行動につながる場合があります。
リベンジ退職が組織に及ぼす影響

たったひとりのリベンジ退職が、組織に思わぬ影響を及ぼす恐れがあります。
具体的な例をご紹介します。
業務の停滞・混乱
引継ぎが不十分なまま退職されることで、後任が業務を把握するまでに時間がかかり、顧客対応や社内業務が滞留します。
特に繁忙期や決算期の離職が与える影響は大きく、状況によっては顧客離れや生産性低下に繋がる恐れもあります。
情報・ノウハウの流出
顧客情報が流出した場合、顧客を他社に奪われるリスクや流出防止施策の費用、被害に遭った顧客への補償など様々なコストが発生します。
また、競合他社へ情報や技術が流出することで、競争力が低下します。
問題が大きくなれば企業の信頼が低下、資金調達が難しくなるといっただけでなく、株価下落や顧客離れに繋がる恐れがあります。
残存従業員のモチベーション低下・連鎖退職
退職者が会社の悪口や内情をSNSや口コミサイトに書き込めば、それを見た従業員の組織への信頼が低下し、不満が募り、モチベーション低下につながる恐れがあります。
また、残ったメンバーは元々の業務に加えて、退職者の分の業務が振り分けられるため、負荷が増大し、不満が増えます。
負担が増えたまま、組織が課題を解決しようとしない場合、残された従業員も自分の処遇を見直し、連鎖的に離職する恐れがあります。
さらに、リベンジ退職の背景に労働環境や評価への不満があった場合、残った従業員は「自分も同じことに陥るかもしれない」と考える可能性があります。
特に退職者が周りに悪口を吹聴したり、引き抜きをしたりする場合、連鎖退職のリスクが高まります。
採用・育成コストの増加
採用活動は求人掲載費や人材紹介料などの外部費用だけでなく、社内での人件費や育成コストなど様々なコストが発生します。
特に突発的な退職の場合、社内での引継ぎも進んでいないことが多いです。
そのため、どのような人物を採用すべきかが不明瞭なまま採用してしまい、必要以上にコストがかかってしまいます。
企業イメージの悪化
口コミサイトやSNSは従業員だけでなく、顧客や取引先も目にします。
そのため、退職者が口コミサイトやSNSに悪評を書き込んだり内情を暴露したりすることで、企業イメージが低下し、顧客や取引先からの信頼を失う恐れがあります。
また、求職者はブラック企業や社内トラブルを抱える企業への応募を避ける傾向があるため、優秀な人材の獲得が困難になります。
リベンジ退職の前兆サイン
従業員に以下のような言動が見られる場合は、リベンジ退職の前兆である可能性があります。
- 返信が遅い、会話を避けるといったコミュニケーションの減少
- 業務への関心が薄れ、真剣に取り組まないなど、主体性や積極性の低下
- ミスが増える、納期が遅れるなど業務の質の低下
- 正当な理由のない遅刻や欠勤、早退が増える
- 身だしなみが変わった など
リベンジ退職の前兆は事前に現れることがあります。
具体的なサインを見逃さないように日頃からこまめに従業員とコミュニケーションをとることが大切です。
リベンジ退職を防ぐためのアプローチ

リベンジ退職は知らず知らずのうちに起こる可能性があります。
問題が起こる前に企業側にできることをご紹介します。
透明性が高く公平な評価制度の構築
評価に対する納得感を高めることは離職を防ぐ基本です。
そのため、透明性が高く公平な評価制度を構築することは非常に重要です。
評価基準を明文化し、定期的なフィードバックを実施し、従業員が「公平に評価されている」と感じられる環境を整えることが大切です。
労働環境の改善
労働環境の改善も重要です。
長時間労働の是正やハラスメント防止研修の実施、リモートワーク・フレックス制度を導入するなど、職場の状況に合わせ、働きやすい環境を整えましょう。
従業員の声を吸い上げる仕組みの構築
従業員の声を吸い上げる仕組みを構築し、心理的安全性を高めることも大切です。
定期的な1on1ミーティングや匿名アンケートを通じ、従業員の不満や要望を早期にキャッチします。
従業員の声を聞いたら放置してはいけません。
改善すべき点がないか分析し、個々にフォローアップする姿勢も重要です。
また、定期的に従業員エンゲージメント調査を実施することも有効です。
管理職に向けた教育の実施
リベンジ退職は管理職との関係悪化に起因するものが多いです。
そのため、管理職教育を強化することも重要です。
具体的な内容としてはコーチングスキルや傾聴力、ハラスメント防止に関するトレーニングがあります。
教育・研修は一度実施したら終わりではなく、定期的に実施し、ブラッシュアップすることも重要です。
キャリア支援・成長機会の創出
従業員のキャリア支援や成長機会を創出することも大切です。
社内研修の実施や資格取得支援、社内公募制度などを整備し、「この会社にいれば成長できる」という実感を持ってもらうことが人材定着につながります。
円満退職を促すルールづくり
実際に退職の申し出があったときに円満に退職してもらうことも大切です。
そのため、退職申し出から退職日までのプロセスを標準化し、引継ぎ期間の最低日数や引継ぎ資料のフォーマットなどをあらかじめ規定しておきます。
こうすることで退職時のもめ事も起きにくくなりますし、「いろいろあったけど、いい会社だった」と思ってもらうことで、退職後のトラブルを防止する効果が期待できます。
離職のサインを見逃さない
管理職が日常的に部下の言動や変化に気を配り、離職のサインを見逃さないことも重要です。
離職の前兆が見られたら、早期に面談を実施し、不満を吸い上げ、フォローを行いましょう。
事前に不満を解消できれば、リベンジ退職に発展するリスクを大幅に下げる効果が期待できます。
バックグラウンドチェックでリベンジ退職リスクを軽減しておく

労働環境や評価制度を整えても、トラブルを起こしやすい候補者を採用してしまうと、リベンジ退職のリスクは高まってしまいます。
採用段階でトラブルを起こしやすい候補者を採用段階で見抜き、リベンジ退職のリスクを低減する方法をご紹介します。
バックグラウンドチェックで経歴詐称を排除する
経歴を偽った候補者を採用した場合、入社後にトラブルが起きやすく、不満や報復リスクも高まります。
採用段階でバックグラウンドチェックを実施し、学歴や職歴、資格、犯罪歴などを客観的に確認すれば、入社後のトラブルリスクを下げることにつながります。
リファレンスチェックで前職での問題行動や離職背景を把握する
中途採用の場合、バックグラウンドチェックと併せてリファレンスチェックも実施することも重要です。
リファレンスチェックとは、前職の上司や同僚などの第三者にヒアリングを行い、候補者の人柄や働き方、問題行動について確認するものです。
前職で同様のトラブルが複数報告された場合、入社後にも同様のリスクが生じる可能性があります。
人柄や問題行動の有無については面接で深掘りする方法もありますが、候補者が真実を話すかどうかわかりません。
候補者がどのような問題を起こしたか、どのような理由で退職したのかを採用段階で多角的に把握することが重要です。
バックグラウンドチェックとリファレンスチェックを併用することで、候補者の主張だけでは把握できない内容を客観的に確認できます。
カルチャーフィットを採用段階で見極める
入社前後のギャップを小さくすることはリベンジ退職の根本的な予防につながります。
経験やスキルだけでなく、自社の価値観や組織文化と候補者の働き方・キャリア観が合致しているかについても確認しましょう。
まずは面接でキャリア観や仕事への向き合い方を深掘りし、リファレンスチェックで前職での働き方を客観的に確認すれば、候補者の価値観に矛盾がないかどうかを判断することができます。
退職後のリスクへの対処法

従業員の退職後もリベンジ退職のリスクを最小化するための体制を整えましょう。
具体的な対処法をご紹介します。
丁重に送り出す
退職時に揉めたり、感情的な対応をしたりすれば、それ自体が報復行動の引き金になりかねません。
退職者に対して誠実に向き合い、感謝の言葉を伝え、円満な形で送り出す姿勢が大切です。
引継ぎ体制を標準化する
引継ぎを退職者任せにせず、属人化しない仕組みを日頃から整えることも重要です。
引継ぎの手順やフォーマット、どこまでやれば引継ぎが完了したといえるかを明確に定義し、組織のなかで標準化しましょう。
情報持ち出しの防止策を講じる
社内の情報持ち出しについても防止策を講じましょう。
PCや外部記憶媒体のアクセスログを管理し、退職が決まった時点でアクセス権限を段階的に制限します。
退職時に秘密保持誓約書(NDA)を締結することも有効です。
SNS・情報漏洩リスクのモニタリング
株式会社マイナビが「転職者のSNS発信と企業対応に関する実態調査」を実施し、結果を公表しました。
これによると、退職後にSNSや口コミサイトに前職企業のことを「投稿したことがある」と回答したのは、2024年に転職した正社員のうち51.3%にのぼることがわかりました。
一方、SNSや口コミサイトで「自社の仕事をほのめかす投稿や自社のネガティブな情報をみかけたことがある」と回答した中途採用担当者は65.9%にのぼることがわかりました。
また、企業側の対応としては、「日頃から目視で確認している」と回答した中途採用担当者が4割を超える結果でした。
しかし、企業の採用担当者が採用業務と並行してSNSや口コミサイトを目視確認したり、削除依頼したりするのは負担が大きくなります。
状況に応じ、自社に関する投稿を一括管理・監視できるSNS管理ツールや、風評監視ツールなども検討するのも良いでしょう。
問題投稿を発見した場合や報持ち出し、競業避止義務違反が疑われる場合は、法的対応を含め、弁護士や専門機関と連携することをおすすめします。
参考≫≫
マイナビキャリアリサーチLab「転職者のSNS発信と企業対応に関する実態調査
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20250528_99882/#SNS-4 」※1
まとめ
リベンジ退職は、業務の停滞や情報漏洩、風評被害、連鎖退職など、組織に広範なダメージを与える企業リスクです。
リベンジ退職を防ぐためには、退職後の対応だけでなく、労働環境の改善や評価制度の見直し、そして採用段階のミスマッチ防止を三位一体で機能させることが重要です。
バックグラウンドチェックとリファレンスチェックを活用した採用プロセスの強化は、リベンジ退職をはじめとした採用後トラブルの根本的な予防策として効果的です。
リベンジ退職のリスクに不安を感じている企業は、労働環境や評価制度の見直しと併せて、採用プロセスの強化、見直しを始めましょう。
※1 マイナビキャリアリサーチLab「転職者のSNS発信と企業対応に関する実態調査」
