事件に学ぶ採用リスク⑤学歴詐称は50人!1,000人近くの自治体も…
2021.06.14
事件の概要
以前、受験資格が「高校卒業まで」と限定された労務職の試験を、大卒にも関わらず受験・採用された水道局の44歳の男性職員に対し、神戸市が懲戒免職処分とした件について解説しました。
実は自治体の採用試験における学歴詐称問題はたびたび起こっており、決して珍しいことでありません。
2004年度に青森市、2005年度に尼崎市で学歴詐称が発覚しています。
2006年、神戸市の小学校の女性調理師が、「短大卒」であるにも関わらず「高卒」と学歴を偽り、採用されていたことが匿名の通報により発覚しました。本事案をきっかけに、神戸市は学歴詐称の調査に乗り出したのです。
なお、この女性調理師は2006年6月、諭旨免職(ゆしめんしょく)となっています。神戸市は「自ら学歴詐称を申し出れば諭旨免職、それ以降内部通報などで詐称が発覚した場合は懲戒免職にする」と発表していました。
このとき、自ら学歴詐称を名乗り出たのは36人。しかし、それ以降も匿名の通報により学歴詐称が発覚し、懲戒免職となったのは14人になりました。前述の男性職員も当時の調査で「高卒」と答えており、今年2月、匿名の内部通報よりに発覚しました。
神戸市だけが特別多いわけではありません。2007年に大阪市で学歴詐称の自己申告を行った結果、1,000人近くが申し出ました。また、横浜市では500人以上が申し出ています。
諭旨免職とは
諭旨免職は公務員の免職の一種で、任命権者が職員の非行や違反行為を諭し、本人が納得したうえで退職を申し出させるものです。
今回の男性職員のように「懲戒免職」となった場合は履歴書にその事実を記載する必要があります。しかし、諭旨免職は「免職」という言葉がついてはいますが、履歴書上は「自己都合退職」になります。
つまり、「諭旨免職」 の場合、履歴書を見るだけでは、応募者が過去に学歴詐称をしたことはわかりません。
本事案のような応募者の人物像
大阪市と横浜市の処分はどちらも「停職1か月」。神戸市と比べるとかなり軽い処分です。神戸市は「免職」ですので、職を失うことを恐れてなかなか言い出せないこともあるかもしれません。そう考えると、まだ学歴詐称を申し出ていないケースがあるかもしれません。
同じ「免職」でも、自分から申し出ていれば「諭旨免職」で済んだはず。それにも関わらず事実を隠し続けたことから、誠実さに欠け、社会良識が乏しいだけでなく、自己中心的な人物であることが窺えます。
採用後に想定されるリスク
上記のような応募者を採用した場合、業務連絡で虚偽報告を行うなど、いい加減な仕事をしたり、無断欠勤や社員にハラスメント行為を行ったりする可能性も否定できません。
社員がいい加減な仕事をしたり、ハラスメント行為や無断欠勤を行ったりした場合、以下のようなリスクが想定されます。
・苦情やクレームなどの電話対応に追われ、通常の業務ができなくなる
・売り上げが減少する
・風評被害が発生する
・社員の退職連鎖(人的損失)
・ハラスメント被害者から損害賠償を請求される など
このように、従業員の不始末は事業の正常な運営を妨げ、会社経営にとって大きなリスクにつながりかねません。
また、業務中にトラブルが起きた場合、上記に加えて使用者責任が問われる可能性もあり、より深刻な事態となります。
採用リスクを回避する方法
レキシルはWebの専門手法を活用し、SNSや各種ニュースサイト、データベースなどを調査することで、履歴書や面接だけではわからない応募者の情報や性格、素行などを評価・報告します。
通常の採用基準にレキシルをプラスすることで、トラブルを起こしかねない応募者の入社を防ぎ、採用リスクを回避しやすくなります。
まとめ
平気で嘘をつく・自己中心的・誠実性に欠ける人物は、入社後に大きなトラブルを招く恐れがあります。
特に業務中にトラブルが起きた場合、会社への損害が大きくなります。
採用基準に新たな判断軸を加え、リスクを回避することが重要です。